アーリーリタイアという言葉には幸せと苦難、2つのイメージがあります。
リタイア後の生活をどう維持していくのか、人それぞれ、格差があるからです。
十分な準備をしてリタイアしたのか、それとも追い込まれて不本意なまま退職したのか、というリタイアに至った過程が異なるからです。
その意味では、リタイア前の準備とリタイア後の気構え、双方が揃っていることがリタイアを成否を分けることになります。
ただ、どんなリタイアであっても、幸福感を感じなければ、リタイアする意味がありません。
では、幸せを感じるリタイアを実現するには何が必要なのか、連載していきたいと思います。
第1回目はリタイアの適齢期を考えたいと思います。
早すぎるリタイアの可能性と危険性
私が若年リタイアができなかった理由
運悪くブラック企業に就職しない限り、20代〜30代の頃は、仕事を覚えて成果を出し、上司や周囲に評価されようと必死に働いている年代です。
特に20代のときには、私もアーリーリタイアや将来の年金や生活のことなど考えたこともありませんでした。
しかし、心境が変わったのは30代半ばでした。
社内の人間関係の煩わしさや先輩の嫌がらせ、連日の深夜勤務に、疲れ切って週末を迎え、泥のように眠る生活でした。
30代になると、20代ならストレスを感じないことにも強いストレスを覚え、気がつくと、休日はネットで別荘物件を見ながら妄想するようにもなっていました。
現状から脱したいという気持ちが芽生えていたからです。
しかし、30代でリタイアしなかったのは、次の理由からです。
- まだ子供が小さく、教育費は責任を持ちたかった
- 住宅ローンの支払いもあった
- 会社をやめてサラリーマン時代以上に稼ぐ自信を持てなかった
当時の私は独立して収入を得る思考と能力がありませんでした。
20代・30代のリタイアで成功するタイプ
最近、20代・30代で独立して稼ぐ人たちと接するようになって、リタイア後に独立した人達にはある種の共通項があると感じています。
それは、①非常に頭が切れて努力家であること②起業を楽しんでいること③ダブルインカムか独身で家庭のために稼ぐという義務感が希薄な人が多いということです。
そして、最も重要な共通項ですが、社会に貢献する、あるいは生活に役立つ商品やサービスを提供することが、成功するためのビジネス戦略だと皮膚感覚で分かっているということです。
稼ぐために働くというより、人に役立つサービスなら、必ず、あとから収益が伴ってくると信じています。
大手企業が収益を上げるためのビジネスに知恵を絞っているのに対し、成功している起業家は「社会に役立つことは何か?」を考え、あとから収益につなげるという真逆の戦略論を感じます。
こういう人たちは、20代30代でリタイアしても、おそらく稼ぐ力もあり、食いっぱぐれることはないと感じます。
50代まで準備するのが賢明なタイプ
逆に、会社のノルマをこなし、営業成績を上げることに日々汗を流しているのが普通のサラリーマンです。
会社の商品が社会に貢献しているかどうかは関係なく、まず売るのが先決という日々を送ります。
以前、ご紹介したと思いますが、損失を被るかもしれないのに高齢者らに投資信託を勧める行員らは、社会貢献よりも行内のノルマや営業戦略に従うことが生きる道だと心の中で消化しているのだと思います。
社会のノルマに従うことに慣れ、起業して稼いだり、ネットで収入を得る才覚がないと思う人は、早まって早期退職はしないほうが賢明です。
むしろ、嫌なことがあっても50代まで我慢してリタイアの準備を進めたほうが、リタイア後に幸せになれると考えます。
私は50歳のときに会社をやめた場合の年金支給額の少なさを知って、「これは老後に苦労しそうだ」と考え、早期退職を思いとどまりました。
いまでは、何らかの起業や副収入を得る自信がありますが、40代後半までは、その自信を持てませんでした。
もうひとつ、50代まで準備したほうが良いタイプは、貯蓄が少ないと不安になる心配性の人です。
リタイアの目的は、幸せな気分で生活することです。
リタイア後に貯蓄の少なさを心配して生活するくらいなら、必死に貯蓄を貯めるか、定年まで勤め上げて60歳以降も再雇用で働くほうが、安心で幸せな気分で生活できるかもしれません。
心配性の人にとって、貯蓄や収入は精神安定剤のようなものです。
50代の社員は会社にとって必要なのか?
65歳定年制など国の制度と真逆な会社の空気
日本社会はすでに65歳定年制に向けて準備するだけでなく、70歳定年制という議論まで飛び出しています。
しかし、多くの企業は本音では50代以上の中高年を必要だと考えているのでしょうか?
会社にとって必要なのは、従順な40代まで。50代以上の社員をどう扱えばいいのか、本当のところは困っているのです。
私の知人を見ても、ある金融関係の大手企業は55歳以降は年収半減。それでも「ローンが残っているから」と我慢して働いています。
関連会社に出向や転籍させられた友人もいます。
しかし、使い物になるかどうか分からない中高年社員を受け取った子会社もまた気の毒です。
本音では迷惑だと感じていると思います。
しかし、その出向・転籍は決して本人の意思ではないのです。
会社の長年の人事ルールであり、中高年を外に出さないと、若年層が上に上がれないという人事上の輪廻があります。
ただ、若年層もいずれは哀愁漂う中高年になるのです。
中高年層を粗末にする会社は、いすれ、自分にも同じ仕打ちをしてきます。
そのことを覚悟し、自分はどう自分の身を処すのか、若い頃から考えておく必要があります。
中高年は自分でリタイアの成功モデルを作るべし
会社からも出向先でも邪魔にされる中高年ですが、邪魔にされたときから、いかに幸せな生き方を掴み取るのか、人生の勝負が始まります。
幸せを感じるリタイアの形は、大別すると、次の3つありそうです。
- 65歳の年金支給年齢まで悠々自適に貯蓄を切り崩して生きる
- リタイア後に事業主になって自分の好きな仕事だけをやる
- 投資やネットで収入を得ながら若い頃からやりたかった趣味やボランティアを楽しむ
最初のケースは、資産が多い人は幸せなリタイアになると思います。ただ、資産の少ない人は老後破産の危険性があります。
2番目のケースは、自分の好きな仕事の面で自己実現させるチャレンジです。リスクはありますが、成功したら幸福感は相当得られそうです。
3番目のケースは、よくありがちなリタイアの形ですが、意外に難しいかもしれません。
というのも、投資で勝つのは簡単ではないし、ネット収入もセンスとコツコツ継続する根気や努力が必要です。
しかも、なかなか成果が出ないからといって、変なコンサルに頼ったりしたら、身ぐるみを剥がされ、逆に、リタイア生活の崩壊を早める恐れもあります。
幸せな人生を求め始めたときがリタイアの適齢期
「人生100年時代」という言葉が踊っていますが、介護を必要としない健康年齢(2013年・厚労省調べ)は、男性は80歳、女性は86歳です。
会社で邪魔にされながら65歳や70歳まで勤め上げたら、残りの人生は実質10年ほどしか残っていなのです。
決して、70歳まで働いて、あと人生が20年も30年もあるわけではありません。
リタイアの適齢期はいつなのか?
前述したように、それぞれが置かれた現状によって適齢期は異なります。
ただ、私は会社に定年は決められたくないと考え生きてきました。社畜のささやかな抵抗なんかもしれません。
自分の手で幸せな人生を作りたいと思い始めた時が定年だと考え、リタイアの本格準備に入っています。
たとえ、これまで辛いことばかりの人生だったとしても、誰もが最終コーナーは幸せな人生を送ってほしいと願っています。
そのためには、人生100年時代などといった現実離れした言葉に踊ろされることなく、幸せを感じるリタイアを実現するための準備を進めてほしいと考えています。