大手企業が次々と45歳以上の中高年社員をリストラ
リストラの中心は45歳以上の中高年
まるで申し合わせたかのように、昨年後半から今年にかけ、大手企業が次々と、希望退職、いわゆるリストラを発表しています。
主なターゲットは45歳以上の中高年。メディア報道によると、具体的には次のような惨状です。
富士通は19日、早期退職制度により3月末までに2850人を削減すると発表した。間接部門から営業などへの配置転換も進める。(出典:日本経済新聞)
NEC(6701)は29日、希望退職者を募集すると発表した。対象はグループ会社で間接部門やハードウエア領域の特定部門に在籍している45歳以上かつ勤続5年以上の従業員。募集人数は上限を設けない。(出典:日本経済新聞)
飲料大手のコカ・コーラボトラーズジャパンホールディングスは14日、45歳以上の社員を対象に希望退職者700人を募集すると発表した。(出典:朝日新聞)
日本ハムは31日、45歳以上の社員を対象に、全社員(子会社への出向を含む)の約1割にあたる200人を上限に早期退職者を募ると発表した。(出典:日本経済新聞)
エーザイは25日、45歳以上の従業員を対象とする早期退職を募集すると発表した。100人程度の応募を見込んでいる。約3000人いる全従業員の3%に相当する。(出典:日本経済新聞)
アルペンは9日、希望退職者を300人程度募集すると発表した。同社とプライベートブランド(PB)を製造する子会社ジャパーナ(名古屋市)の45歳以上64歳未満の正社員と契約社員を対象にする。(出典:日本経済新聞)
協和発酵キリンは5日、45歳以上の社員を対象として希望退職者を募集すると発表した。対象となるのは現時点で生産本部に所属する社員を除く、4月1日時点で45歳以上かつ勤続5年以上の社員。(出典:日本経済新聞)
世の中は人手不足で新卒の就活は売り手市場と言われていますが、一方で中高年は企業にとってお荷物になっていることが改めて強く印象付けられました。
日本経済新聞によると、エーザイは「新卒採用を2倍に増やし、組織の若返りを目指す」と説明したそうで、こうした考え方は多くの企業の本音だと思います。
誰でも入社20年ほどでお荷物になる時代
政府は65歳や70歳までの再雇用を推進していますが、企業にとって中高年を雇い続けて若い人の給料を圧迫するのは迷惑な話なのです。
ですから、60歳定年を前に、まだ転身が可能な45歳付近の希望退職を募って組織を若くしておきたいと思うのは経営者目線では当然です。
むしろ、いつまでも会社にしがみついて欲しくないというのが本音だと思います。
若い人たちは、リストラが進めば、鬱陶しい中高年社員が減って職場環境が明るくなると思うかもしれませんが、その若い人だって20年後には中高年です。
会社員の20年間はあっという間です。現在30代だと、もうすぐリストラ対象世代になってしまいます。
ですから、今回のリストラのニュースは若い人にとっても人ごとではないのです。
退職金制度が見直されて早期退職が普通の時代がやってくる!
ベテラン社員と若手社員はどう違うのか?
私も会社オーナーとして、時々、社長にアドバイスしています。
ですから、経営目線で45歳以上にリストラの嵐が吹き荒れている背景を考察したうえで、今後、サラリーマンにはどんな事態が押し寄せようとしているのか考えたいと思います。
私の会社は現在、最高齢は39歳です。そのベテラン社員は新入社員の頃は幼さが残る女性社員でしたが、いまや会社の中心的な存在です。
しかし、毎年、新卒で1〜2人ほど採用しているので、いまでは20代の社員が多数派になりました。
すると、何が起きるのか?
若い社員は新事業や新たな仕事に積極的に取り組みたいと考えています。さらには、先輩社員には、会社が大きくなったので、より一層の責任感と統率力を求めます。
しかし、ベテラン社員は新たな事や新たな業務には消極的です。何事も過去の経験値で判断して動こうとします。
このため、若手はミーティングでベテランに遠慮なく異論や反論をぶつけることがあります。
経営者は会社の利益を中心に考える
多くの社員が出席する会議で、若手社員から反論されることは、ベテラン社員にとって面白くないものです。
ですから、会議のあと、彼女は社長(妻)室にやってきて「彼女たちは失礼すぎます」と苦情を言いにきたことがありました。
ベテラン社員は「社長は社歴の長い自分を信頼してくれている」という気持ちがあるからだと思います。
しかし、経営者というのは、常に、船が沈まず、太平洋を無事に横断することを考えているものです。社員全員の給料や社会保障をしっかりと確保し、毎年増やしてあげたいからです。
ですから、会社がいまのままであり続けるためには、常に変化しなければいけないと考えています。
一方、ベテラン社員は、新たな仕事は未経験の領域に足を踏み入れるわけですから、これまで以上にエネルギーと苦労を伴うことを考えてしまいます。
私も会社員時代はそうでしたが、年齢を重ねてくると、新たな挑戦よりも楽な道を選ぼうとするものです。
結局、ベテラン社員は社長に苦情を言ったものの、最後は逆に社長にたしなめられることが少なくないわけです。
会社に依存する社員は不要な時代の到来!
企業が生き残るためには、新たな領域にも挑戦し、常に変化しなければいけません。
ですから、会社に貢献しなくても定年までは安泰だと考える社員は徐々にお荷物扱いされるようになります。
経営陣からも、若手からも、中高年社員は厳しい視線に晒される時代が本格化したのかもしれません。
とくに、政府が企業に70歳まで雇用してほしいと要請すればするほど、企業は中高年を見る目が厳しくなります。なかには、早期退職してほしいと考える企業が増えても不思議ではありません。
では、優秀な中高年社員ならば安泰なのでしょうか?
多くの企業は雇用を延長するなら、退職金制度を見直し、その資金を中高年の人件費に振り向けたいと考えていると思います。
企業収益が増えない限り、雇用延長した中高年の人件費はどこからか捻出する必要があるからです。
若い労働力が不足する中で、若手社員の給料を削るわけにはいきません。必然的に中高年の退職金が標的にされるのではないでしょうか。
ですから、私は以前にも申し上げましたが、近い将来のサラリーマンは退職金制度廃止も想定する必要があると考えています。
対処金ゼロ時代を想定して、いま考えるべきことは何か?
- 退職金をあてにして住宅ローンを一括返済する人生設計はやめる
- 年金の不足分を退職金でカバーする老後設計も見直す
- ひとつの会社に60歳まで依存する生き方を若いうちに改める
まずは、この3点を心の片隅に置いておく必要があると考えます。