人生100年の掛け声で定年退職制度がなくなると考える理由
近い将来に定年レス時代が到来する予感
最近、よく耳にする言葉に「人生100年時代」と「70歳定年延長」という言葉があります。
「長寿の時代になったのだから、70歳まで働いて稼ぎましょう」という掛け声なのです。
しかし、猫の手も借りたいほど人手不足の会社は別として、会社経営者にとって「プライドばかり高くて、腰が重く体力も記憶力も劣化した高齢者を70歳まで雇いたくない」というのが本音です。
70歳まで高齢者を雇うことで、そのための人件費も発生するため、若手の給料を引き上げる原資が不足します。ですから、若年の賃金アップが鈍化し、会社全体の活気を削ぐことになりかねません。
当然、経営者は60歳のときに支給する定年退職金を何とかできないか考えるようになります。退職金をなくすることができれば、若い社員にお金を回すことができるからです。
70歳まで雇用する代わりに退職金を廃止する会社が出始めたら、雪崩を打ったように真似る会社が急増するのではないかと考えています。
定年レス時代の到来です。
会社経営者にとって中高年社員は処遇が難しい
私は早期リタイアした無力男ですが、会社経営者(妻)の相談に乗ることがあります。もちろん、無料、ボランティアです。
最近、60歳を迎える女性社員の処遇について相談を受けました。
その会社は設立当初、若い人ばかりで運営していましたが、あれから20年が経ち、初めて社員のひとりが定年退職年齢(60歳)に達するようになりました。
しかも、その社員は「自分が会社に貢献したことも加味してほしい」と、60歳以降も現役時代とほぼ同水準(1000万円前後)の給料を要求しているので、経営者は頭を抱えていました。
私がアドバイスしているその会社は、決してリストラせず、社内の雰囲気も明るく、働く人たちにとっては理想的な会社を目指すのが最大のコンセプトです。
一人、一部上場の超優良企業に転職した社員を除いて、居心地がいいせいか、退職する社員はなく、それだけでも会社を設立した甲斐があります。
会社の役割は利益だけではなく、雇用の確保も社会貢献だと考えているからです。
60歳超の社員も納得した最適解とは?
「60歳を超えても1000万円近い年収がほしい」
その希望をどう叶えてあげたらいいのか?
彼女の希望を満額で受け入れたら、新卒社員の採用を抑制しなければいけません。さらには、若手社員のベースアップにも影響しそうです。
考えに考えた末、あることを思いつきました。
それは100%子会社を設立し、彼女を取締役として経営を任せるというものです。
会社の設立費用や機材、家賃など、全てのコストは親会社が負担しました。彼女の報酬は会社の売り上げ次第になりますが、幸いなことに、長年培ってきた人脈とスキルがあります。
事実上、彼女の会社なので頑張れば、現役時代以上の報酬も可能です。
もちろん、本人は自分の裁量で経営できる会社役員になれたので大満足です。
彼女が現役時代以上に積極的な営業を展開したせいか、会社は初年度から黒字で、幸いなことに経営は順調です。
その結果、彼女は60歳を超えても希望の1000万円近い報酬を得ています。これで定年退職者の処遇問題は解決しました。
この案は一石二鳥でした。
残った若手社員も「60歳まで働けば、一国一城の主人(あるじ)になれる」ことが分かり、俄然、やる気と希望を増したようです。
「雇用を確保し決して使い捨てにしない会社」
この会社の理念とも合致する方策でした。
中高年の雇用は政府がいうほど楽ではない
定年レス時代を覚悟することが賢明
私の妻が経営するちっぽけな会社でも定年退職の際には苦悩したのですから、もっと大きな会社の経営者は大変だと思います。
政府は簡単に「65歳まで雇用しろ」といい、少し時間がたつと、今度は「70歳まで雇用しろ」と言い始めそうです。
しかし、現実的には、その原資をどこから持ってくるのか?
極めて地に足のついた判断が必要になるのです。
私は冒頭で、70歳雇用時代には、定年退職制度とともに退職金制度もなくなるのではないかと申し上げました。
これは単なる勘というよりも現実的な問題に直面して感じた自然な成り行きのように思うからです。
ですから、40代以下のサラリーマンは退職金をあてにした人生設計を組んでいると、将来、危険だと感じています。
50歳前後には独立できるスキルが必須の時代かもしれない
70歳定年制度が完成したら、それはサラリーマンにとって安心な時代ではなく、むしろイバラの道の始まりです。
私がそう感じる理由は次の通りです。
- 年金制度が70歳まで支給されない時代が来るかもしれない
- 会社が70歳までの人件費を捻出するために現役時代の給料を抑制するかもしれない
- 退職金のない時代が現実になるかもしれない
- 60歳で退職金をもらってリタイアしようという人生設計が狂う可能性がある
- 退職金がないければ嫌な会社でも70歳まで社畜のように働くことになる
ですから、若いうちから、どんなことがあっても生きていける生命力を培っておく必要があります。
生命力とは何か?
生命力とは、自分自身のスキルです。それ以外には、自分が経営する会社を持つか、中高年になって誰かに雇われて時間を切り売り(時間給労働)しながらおカネをもらうしかありません。
この中で、最も現実的で幸せな人生を手にできるのは間違いなくスキルだと思います。