日本の歪みは最後に少子化問題に行き着く!
全ての雇用促進政策は人手不足解消が目的
「人生100年時代」なのだそうです。
政府は企業に70歳まで定年延長を奨励し、女性の社会進出にも力を入れています。
さらには2025年まで単純労働の外国人労働者を50万人以上増やす計画です。
年齢や性別、国籍にかかわらず、働く意欲のある人たちに働く場や機会を与えることは良いことのようにも見えます。
しかし、どれも少子高齢化に伴う人手不足の解消が目的です。
日本は毎年40万人もの人口が減少しています。
毎年、地方の県庁所在地が消滅するようなペースで人口が減少し、働き手も減っていることになります。
ですから、年齢や性別、国籍を問わず労働者を増やす労務政策は、一時しのぎの対策です。
では、抜本的に人手不足を改善するには、どうしたらいいのでしょうか?
その方法はひとつ、子供を増やすことです。
答えは極めてシンプルですが、少子化対策は極めて脆弱です。
”女性の社会進出”の美名と裏腹な保育環境と職場事情
政府は女性の社会進出を後押しするとしていますが、子供を預ける保育施設や保育士が慢性的に不足しています。
心底、女性の社会進出を強化するのなら、まずは「子供の面倒を誰が見るか」という基本的な問題を解消するのが先決なはずです。
しかし、順序が逆なために、何が起こっているのか?
子供を意識的に作らないDINKs(ディンクス)の増加です。
日本経済新聞は、日本の出生数が推計以上に早いペースで減少していると報じました。
出生数90万人割れへ 19年、推計より2年早く 社会保障・成長に影
日本の出生数が急減している。1~7月は前年同期に比べて5.9%減り、30年ぶりの減少ペースとなった。団塊ジュニア世代が40代後半になり、出産期の女性が減ったことが大きい。2016年に100万人を下回ってからわずか3年で、19年は90万人を割る可能性が高い。政府の想定を超える少子化は社会保障制度や経済成長に影を落とす。出産や子育てをしやすい環境の整備が急務だ。(出典:日本経済新聞)
出生数の減少は人手不足をますます深刻化するのは間違いありません。
極端な話ではありますが、子供を産んだ夫婦には一人につき養育費として年間300万円支給すれば、10人ほど産む夫婦が増えるかもしれません。
養育費だけで年収3000万円に上るのですから。
しかし、政府の少子化対策は小出しで、条件付き支援が多過ぎるのは実情です。
小出しの少子化対策と高齢労働者の推奨は
政府は消費税を10%に引き上げる飴玉として、10月1日から幼児教育・保育の無償化をスタートしました。
しかし、早くも新たな問題が指摘されています。
厚生省は今年4月、2018年10月の時点で待機児童数が4万7198人に上ると発表しました。保育士不足で幼稚園や保育園の受け入れ体制に余裕がないからです。(参考:厚生労働省の発表)
今回の幼保無償化で、「無料ならうちも預けようか」という世帯が増えた場合、新たな待機児童問題を生む可能性があるという指摘です。
働く両親に代わって、誰が子供の面倒をみるのか?
この課題を置き去りにして飴玉政策を先行する弊害は、まもなく顕在化するかもしれません。
人生100年は嘘!高齢労働者が増加する弊害とは?
人生100年どころか健康な時期は意外に短い
高齢者の定年延長は急速な少子化による人手不足対策として登場しました。
いつまでも働いてもらうのは、年金対策と労働力対策の一石二鳥なのかもしれません。
70歳まで働ける政策と聞けば、一見、素晴らしいことのようにも聞こえます。
しかし、私には「貧困老人は死ぬまで働け」という意図に感じてしまいます。
多くの国民は、せめて老後くらいはストレスや労働から解放されたいと願っているのではないでしょうか。
医療が進歩し食生活が向上したとはいえ、寿命が大幅に伸びるわけではありません。
国立社会保障・人口問題研究所の推計では、30年後の2050年、男性の平均寿命は85.35年、女性は91.80年と予測しています。(参考)
30年後でも平均寿命は男女とも100歳に達しないのです。
むしろ、人生80年と考えるのが現実的であり、それより早死にすることも想定する必要があります。
高齢労働者の増加がもたらす問題点とは?
平均寿命を考えると、定年延長で70歳前後まで働いたら残りの人生は10年余りしかありません。
好きな仕事ならともかく、健康で生活できるギリギリまでお金のために働き続ける人生が果たして幸せでしょうか?
いつまでも人生を楽しめるような健康状態とは限りません。健康年齢はもっと早く終わるのです。
加齢とともに体のあらゆる機能が低下し、高齢者の自動車事故に象徴されるように、高齢労働者の増加はあらゆる事故を誘発する恐れもあります。
そこまで先回りして政府が高齢労働者の増加対策を考えているのか甚だ疑問です。
高齢者の事故は被害者だけでなく本人も気の毒なものです。
高齢者の経済的選別が進む危険性
大手企業を中心に45歳以上の中高年社員をリストラする動きが活発化しています。
上場企業では今年1月から9月で早くも早期退職者の募集が1万人を突破しました。
調査会社の東京商工リサーチは9日、2019年1~9月に上場企業27社が合計で1万342人の早期退職者を募集(または応募)したと発表した。18年の年間(12社、4126人)の人数の2.5倍に相当し、19年は年間で6年ぶりに1万人を超えることが確実になった。経営不振の電機やアパレルが多い一方で、業績が好調なうちに人員を適正化し、事業環境の変化に備えようとする企業も多い。(出典:日本経済新聞)
最近のリストラの特徴は、業績不振の企業だけでなく、業績が好調なうちに不要な社員を削減する企業も目立っている点です。
定年延長で高齢者を押し付けられる前に、先手を売って予備軍を削減しているようにも見えてしまいます。
大企業を中心に中高年社員を早めに減らす風潮は広がった場合、その先に何があるのか?
使える中高年と使えない中高年。あるいは、使える年寄りと使えない年寄りの選別です。
中高年や高齢労働者がババ抜きゲームのジョーカーのように扱われる可能性があるのです。
その被害を受けるのは、現在の若手社員や中年社員たちです。
年齢で選別されないほど出世するか、それとも、給料だけで満足することなく副業によって自力で稼ぐ力をつけるか。
選別されずに人生後半を心穏やかに生きるためには、これしか方法がなさそうです。
ですから、現在の若手・中堅社員は早くから人生後半の準備が必要な時代になったのかもしれません。