なぜ米国の若手エリートに「FIREムーブメント」が広がるのか
なぜ若者が早期退職を目指すのか?
米国の若者の間では、早期リタイアを目指して貯蓄や節約に励むFIREムーブメントが広がっています。
節約して給料の大半を貯蓄したり、投資を勉強して金融資産を増やし、会社に縛られない自由な人生を目指すという生き方です。
FIREムーブメントは、パワハラなど会社から逃げる人生論ではありません。
心身をすり減らして働いても貧しい老後生活を送る親世代を見て、年収1000万円以上の若手エリートたちが「あんな人生は歩みたくはない」と考えた末の生き方です。
FIRE ( Financial Independence, Retire Early ) ムーブメントは、 経済的独立と早期退職を目標とするライフスタイルを啓蒙するムーブメントである。 このモデルは、ブログ、ポッドキャスト、およびオンラインフォーラムで共有されている情報を通じて2010年代より大きな注目を集め、特にミレニアム世代に人気が高まった。 (出典:Wikipedia)
将来の年金制度が盤石ではない日本では、年収1000万円超でも安心して老後を迎えることができないと考えるサラリーマンが増えています。
米国の若者のように、日本も早期退職して自由な人生を模索する若者が増えると考えています。
その理由について説明したいと思います。
経済的自立と早期退職を目指す「FIRE」が日本でも広がる予感
日本は年功序列が崩壊し、若手優遇、実力主義の競争社会が台頭しようとしています。
しかし、競争社会というのは、優秀な人でも加齢とともに衰え、いずれ若い人たちに負かされる社会でもあります。
60歳定年制度によってベテランが若手に負かされる時期は固定化されていました。
しかし、40代の中高年が頻繁にリストラされる時代になって、負かされる時期の低年齢化が進行しています。
一方で、金融庁が発表した「年金2000万円不足」問題によって、老後の不安を意識する人も増えてきました。
自分年金をつくるために非課税のNISA口座を申し込む20〜30代が急増したとも報じられました。
では、なぜ、米国の若手エリートの間で、FIREムーブメントが広がったのでしょうか?
それは「自分の人生を大切にしたい」と考えたからです。
自分の人生を大切にしたいという気持ちは誰もが心に秘めている気持ちです。
しかし、日本のサラリーマンは自分の人生を他人のために生きていることに気づきつつあります。
その他人が人生を最後まで面倒見てくれる会社であれば、まだ救いがありますが、不要になったら、いつ切られるか分からない他人なのです。
その他人のために、どこまで自分の人生を犠牲にすべきなのか?
FIREムーブメントが日本でも広がるのは時間の問題ではないかと思うのです。
では、「日本版FIRE」を実現するために重要なことは何なのでしょうか?
経済的自立と早期退職に必要なFIREの基本的考え方とは?
経済的独立と早期退職を目指す米国FIREの一般的な方法
誰でも経済的自立と早期退職、つまりFIREを目指すことは可能です。
ただ、経済的に自立して早期退職するのは決して簡単なことではありません。
手順や方法論を間違えると、むしろ不自由な人生に転落する恐れもあります。
ですから、経済的自立や資産形成に向けた正しい努力が必要不可欠なのです。
米国の「RIRE(経済的独立と早期退職)」は、25年間生活できる資産形成と、早期退職後は毎年資産の4%を切り崩す生活が基本です。
リタイアに必要な貯蓄は下記の計算式で簡単に算出できます。
- 1年間の想定生活費×25年間=25年間生きるための貯蓄額
大切なことは、早期退職後の25年分の金融資産をどう蓄積するかという点です。
その場合に重要になのは「貯蓄率」。収入の何%を貯蓄するかということです。
当然、貯蓄率が高い人ほど早期退職までの期間を短縮できます。
収入の75%以上を貯蓄できる人は、貯蓄率50%の人より、1.5倍早く退職できる計算になります。
そして、早期退職後は、毎年、貯蓄の4%を取り崩していけば、25年間生きていけるというわけです。
年収1000万円のサラリーマンの場合は?
米国FIRE(経済的独立と早期退職)で提唱されている資産形成について、具体的に考えてみましょう。
仮に、手取り年収1000万円のサラリーマンが収入の75%を貯蓄するとします。
収入の75%を貯蓄できるということは、年間250万円で生活できるということでもあります。
ですから、貯蓄の目標額は次のようになります。
- 年間生活費(250万円)×25年=目標の貯蓄額6250万円
ただ、早期退職を目指して強めに節約している場合は、退職後の生活費を400万円に設定した方が現実的かもしれません。
すると、次の通りです。
- 年間生活費(400万円)×25年=目標貯蓄額1億円
早期退職したあとは、この1億円から毎年4%(400万円)ずつ切り崩していけば、FIREは実現できるわけです。
実際は、1億円を運用した利回りも加算されるので、1億円あれば、25年以上、自由な生活を実現できるとは思います。
では、経済的自立のための方法論を考えたいと思います。
日本人が経済的独立と早期退職を目指す際に重要なこと
「給料が少ないから無理」という考え方は間違い
米国では、FIREについて「富裕層のものだ」と批判の声もあるといいます。
50%や75%といった高い貯蓄率を実現するには、それなりの収入が必要だからです。
日本でも「給料がすべて生活費に消えてしまう。毎月貯蓄するのはとても無理」と嘆く人も少なくありません。
しかし、嘆いているだけでは経済的独立と早期退職は不可能です。給料が生活費に消えていくのなら、副業で給料以外の収入を増やせばいいのです。
米国のFIREを実現した人たちは、給料以外に不動産投資や株式投資など何らかの収入源を確保している人が少なくありません。
早期退職後も、その収入源は生活を支える柱にもなっているのです。
経済的目標や志は高く設定することが大切だ
経済的自立と早期退職を目指すFIREは、給料以外の副収入、つまり副業が第一歩となります。
ただ、コンビニのアルバイトのように時給の仕事は、心身ともに疲労困憊し、本業に悪影響を与えてしまいます。
ですから、ブログやユーチューブなどコンテンツ資産を蓄積する副業や株式投資など、自宅で完結できる副業が最適です。
とくに、ブログなどのように自分が寝ている間でも稼いでくれるような副業が理想的です。
もうひとつ重要なことがあります。
それは、できる限り、目標は高く設定することです。
目標を低めに設定すると、そこに到達した時点で満足してしまいがちだからです。
しかし、「早期退職後に自由に生きるには1億円前後の資金が必要だ」と高めに目標を設定することによって、そこに到達するための方法や投資のレベルが徐々に高まるはずです。
貯蓄が少なければ、早期リタイアしても経済的不安に襲われてしまいます。
最悪の場合は、サラリーマン時代以上に過酷な仕事に従事する事態になるかもしれません。
それでは、何のために早期退職したのか、わけが分からなくなります。資金は潤沢であるに越したことはありません。
FIREは現実から逃避する人生観ではなく、自分の人生を大切にするための生き方改革です。
お金が全てではありませんが、人生を大切にするには、まずは経済的自立が重要だと割り切るしかないのです。