カメラ業界最大手のキヤノンが初のフルサイズミラーレス「EOS R」を発表して、ソニー、ニコンとの戦国時代に突入しました。
このカメラ大手3社の競争は、消費者にとって、より高品質で低価格なフルサイズカメラの登場につながるだけに歓迎したいと思います。
その戦国時代の幕開けを記念して、これまで2回にわたってキヤノン「EOS R」を中心にフルサイズミラーレスを比較してきました。
いよいよ、今回は最終回です。
果たして、最も売れそうなのは、どの機種なのか?
最大手が発表したキヤノン「EOS R」の私なりの評価は?
それでは始めたいと思います。
カメラ選びで最も重要なポイント
バッテリーの持ちはソニーα7Ⅲに軍配
デジタルカメラは電池がなければ、撮影できません。ただの鉄の塊に過ぎなくなります。
ですから、バッテリーの容量は重要です。そのバッテリーの持ちを比べる上で参考になるのが、撮影可能枚数。早速、各機種を比べてみましょう
- ソニーα7Ⅲ 約710枚(電池NP-FZ100)
- ニコンZ6 約380枚(電池EN-EL15b)
- キヤノンEOS R 約370枚(電池LP-E6N)
ソニーは2017年4月に発売したフラッグシップα9から大容量の電池に変更しました。
その電池をα7Ⅲも搭載しているので、さすがに他の2機種を引き離しています。
この電池問題は地味ながら、非常に重要です。
旅先に電池を何個持参するのか?
電池を交換する余裕のないとき、バッテリー容量の少ない機種の場合は、電源のON・OFFを繰り返してバッテリーの減少を抑えざるをえません。
容量が大きければ、ONの状態でカメラを持ち続け、重要な場面を瞬時に撮影する事ができます。
バッテリーの持ちは、実は写りの良し悪し以上に重要なのではと思える時があります。
キヤノンとニコンのフルサイズに共通する不満
プロカメランを中心に、今回のキヤノンとニコンのフルサイズミラーレスに共通する不満の声があります。
それはカードスロット数がⅠ枚だけということです。
ソニーα7ⅢはSDカードを2枚入れられるのに対し、ニコンとキヤノンはまさかの1枚のみ、つまりシングルスロットでした。
ニコンとキヤノンも上位の一眼レフ機は当然のようにダブルスロットです。
ダブルスロットだと、仮にSDが1枚だめになってデータが取り出せなくても撮り直す必要がなく、もう一枚のSDのデーターを取り出して事なきを得ることができます。
つまり、いざというときに仕事に支障が出ないため、プロにとっては当然の機能でした。
しかし、今回の「キヤノンEOS R」「Z6」はシングルスロット。まるで入門機のような扱いです。
ニコンは「Z6」の上位機種「Z7」もシングルスロットを予定しています。「Z7」は40万円前後の高額機種で、入門機ではありません。
奇しくも、ニコン、キヤノンの2社が同じくシングルスロットと足並みが揃ったのも不思議です。
ダブルスロットは予算的に無理だったのか?
それとも、設計上のミスがあったのか?
理由は不明ですが、このシングルスロットゆえにプロからは「仕事には使えない」という声が相次いでいるのは事実です。
もしかしたらキヤノンが売れると感じる理由
ユーチューブ(Youtube)が変えるカメラの新潮流
最近、テレビでユーチューブを見る家庭が増えています。
そのせいか、YouTuber(ユーチューバー)が中学生の将来なりたい職業第3位に入ったことが話題になりました。
YouTubeにスマホで動画をアップしていた時代から、いまでは一眼カメラで撮った映像をアップする人が急増しています。
デジタル一眼カメラは、ユーチューバーだけにピントが合い、周辺のボケは美しく、立体的な映像になります。
一方、テレビの映像は全てにピントがあっているため、見た目が平板です。
デジタル一眼カメラで、写真だけなく映像も撮る新たな潮流は、小型軽量なミラーレスカメラの需要にもつながっています。
特に、パナソニックが発売しているミラーレスカメラ「GH5」は、YouTuberに人気です。
その理由は、フルハイビジョンの約4倍の画素数で撮影できる4K撮影や、さらには1秒間に60フレームもの撮影(4K60p)に対応しているからです。
ミラーレスカメラで高画質の映像を撮るという時代が本格化しているのです。
キヤノンがフルサイズに待望のバリアングル搭載
ユーチューバーにパナソニックのGH5が人気の背景には、もう一つ、重要な理由があります。
それは、液晶が自由に動かせ、自撮りも楽なバリアングルが搭載されているからです。
カメラを自分に向けて撮影するYouTuber独特の撮影は、バリアングルが便利なのです。
最近は、YouTuberでなくても、旅先で自分の映像を記念に撮影する人も増えています。バリアングルは将来的には、より一層、需要が高まると思われています。
そいて、今回、キヤノンは「EOS R」にバリアングルを搭載しました。
これは非常に評価できる点です。
ソニーがα7Ⅲにバリアングルを搭載していたら、敵なしのカメラでした。
しかし、α7Ⅲは上下に限定的にしか動かせないチルド液晶です。
キヤノンは、快進撃を続けるソニーα7Ⅲの数少ない欠落部分を攻めてきました。
その点は時代感覚に優れたメーカーだと感じます。
ニコンとキヤノンはソニー対策で生煮え機種
さて、今年年末のボーナス商戦は、フルサイズミラーレスの最初の戦場になります。
総合的には、ソニーα7Ⅲが機能面で熟成の域に入っていて、まだ人気は先行しているような気がします。
ただ、キヤノンEOS Rはバリアングル搭載によって写真と映像の両面で使いたい層から支持されそうな予感がします。
ただ、ニコンもキヤノンも、今回の機種は、機能面では生煮えの印象を拭えません。
今年前半、ソニーが高機能かつ廉価なα7Ⅲを発表し、ニコンやキヤノンユーザーがカメラとレンズを売却してソニー機に鞍替えする現象が相次ぎました。
ニコンもキヤノンも慌てたのではないでしょうか。
慌てて開発した結果が、生煮えの性能だったと思います。
ソニー機を売って鞍替えするほどの魅力はなく、むしろ、自社ユーザーがソニーに鞍替えしないように囲い込む守りのフルサイズに思えてなりません。