日本と米国では早期退職のイメージが異なる理由
日本のBlogで米国のFIRE運動が読まれる理由
今年1月に米国の若者が40代で早期リタイアを目指すFIRE運動を紹介したところ、私自身も想定していなかったほどアクセスが急増しました。
やはり、日本でも早期退職して、無理せず、自由に暮らす生活に憧れる人が多いことを改めて実感しました。
日本における早期退職といえば、リストラやパワハラに直面して、早期リタイアを余儀無くされた人というイメージがあります。
日本人は稲作や藩制度の中で生活してきましたから、DNAには組織や群れから離脱することに恐怖感が刻まれています。
ですから、日本では追い込まれて早期リタイアした人が多いのではないでしょうか?
しかし、米国で盛り上がっている40代で早期リタイアを目指すFIRE運動は、日本の早期リタイアとは、まったく趣が異なっています。
高学歴の若者が競争社会で蓄財して目指す人生の目的地
米国の場合、高学歴のエリートが蓄財し、早期リタイア後に資産を運用するなどして無理せず生きていく姿が、FIRE運動の中核的なイメージです。
もともと、米国の早期リタイアには、大きく分けて2つの姿があります。
ひとつは事業で成功し、巨万の富を築いて悠々自適な人生を送る早期リタイアです。
日本と違って、米国では「早期リタイアは成功者の証し」というイメージがあります。
そのイメージは、ビジネスで成功したあと、早めに一線を退き、残りの人生を社会に貢献しながら生きる富裕層がつくったのかもしれません。
もうひとつは、ヒッピー文化の流れを組む自由な生き方です。
ヒッピー(英: Hippie,Hippy)は、1960年代後半にアメリカ合衆国にあらわれた欧米の伝統、制度などそれまでの考えかたにしばられた価値体系を否定する、ボヘミアニズムなどとならぶカウンターカルチャー(COUNTER CULTURE)の一派、およびそのムーブメント。(出典:Wikipedia)
ただ、FIRE運動は反戦や平和を訴え、社会からドロップアウトするといったリタイアではありません。
むしろ、自分の人生を大切に生きるという思想が込められているように感じます。
米国FIREのイメージはエリートが目指す早期リタイア
高学歴・高年収のエリートが競争社会に付き合わない
FIRE運動には、高学歴で高年収のエリートたちが少なくないといいます。
高収入の若者たちが倹約生活を送りながら資産を構築。競争社会には最後まで付き合わず、40代で退職し、切り詰めた生活をしながら、心穏やかに暮らすというものです。
確かに、世帯年収2〜3000万円ほどの若者なら、10年間、倹約すれば、1億円ほどの資産構築は可能です。いや、年収1500万円でも工夫次第で達成できます。
米国は日本以上に競争社会です。転職しながらキャリアアップする人が多いのですが、逆にいえば、いつ解雇されるかわからない不安の中で生きているともいえます。
そんな競争社会でいつまでも心をすり減らす生活は避けたいと考えるのは当然のことです。
では、日本はどうなのでしょうか?
日本の70歳まで働け文化に付き合わない人が急増するかもしれない
いま、日本政府は「人生100年時代」と称して、「可能なら70歳まで」、いや、「死ぬまで働こう」と言わんばかりの空気を醸成しています。
これだけ少子高齢化が進むと、高齢者でも「まだまだ若い」とおだてて労働力に組み込まないと、社会の仕組みが間に合わない国家に直面しています。
そして、もうひとつ、年金の受給人口が急増し、働く高齢者が自発的に受け取りを遅らせてほしいと考えているからです。
そのために「5年遅く年金を受け取ったら、これだけ増額されますよ」とインセンティブも検討されています。
しかし、人間は機械とは違います。加齢に伴い、視力や聴力、記憶力が落ち、何よりも体力が低下します。若い時には簡単にできた作業も容易に処理できず、苦痛になります。
仕事をうまくこなせないと若い人から罵声を浴びることもあるでしょう。かつては隠居していたような人が生きるために働く以上、若い人たちと摩擦が生じるのは当然です。
米国の若いエリートたちは、米国の競争社会の限界を予見し、自分の人生から競争や支配を切り放そうと「FIRE運動」に取り組んでいます。
もしかしたら、日本でも若いエリートたちは、少子高齢化社会の限界を予見し、米国とは異なる日本型の「FIRE運動」に取り組み始めるかもしれません。
ただ、日本型FIRE運動を成功させるには、一部のブロガーたちが呼びかけているような就職もせずに20代でフリーターになってBlogやYouTubeで稼ぐような生活では限界があります。
おそらく落伍者が多発し、社会的なムーブメントはならないと思うからです。
米国のエリートサラリーマンのように、資産を構築してから早期退職し、他人や会社の制約を受けずに、自分で人生をコントロールする。
これが理想的な早期リタイアと私は考えています。