米国で高まる40歳前後で早期リタイアを目指す運動
経済的な自立と自由な人生を模索する若者たちが増えている
米国の若者の間で広がっている潮流があります。
それは、経済的に自立して早期リタイアを目指すFIRE(「Financial Independence Retire Early」の略)という運動です。
先日、日本経済新聞にも掲載されていましたが、米国の20〜30代、いわゆる「ミレニアム世代」の人たちが、早期リタイアを目指して、収入を貯蓄し、節約に励むムーブメントです。
米国の若者の間で「FIRE」と呼ばれる運動が広がっている。「Financial Independence,Retire Early(経済的に自立し、早く引退しよう)」の略で、40歳前後でのリタイアを目指し、収入の7割を貯蓄に回したり、家賃を浮かすため船で暮らしたりする人までいる。つましい生活を受け入れるのは、2008年の金融危機を目撃し、経済的な豊かさに疑問を感じながら育った世代ならでの潮流といえる。(出典:日本経済新聞「40歳で引退、米国で盛り上がる「FIRE」運動」)
米国の若者がなぜ、このFIREに魅せられるのか?
その底流には、幸福の再定義があるようです。
火付け役はブログで情報発信するカナダ人男性
「FIRE」の火付け役と言われているのは「Mr.マネーマスタッシュ」という50歳近いカナダ人ブロガーです。(ブログはこちら)
Mr.マネーマスタッシュはソフトエンジニアでしたが、30歳でリタイアし、投資の基本や節約するためのライフスタイル、起業アイデア、税金などの情報を発信し、ミレミアム世代の支持を広げました。
また、ソフトウエアデベロッパーとして働いていた会社をやめ、34歳で経済的な自立を実現した「マッド・フィアンティスト」もFIREを目指す人たちに人気のブロガーです。
ブログを見ると、「なぜ誰もが自分のビジネスを持つべきなのか」「私の2年目の自由から得た貴重な教訓」「早期退職するための4%ルールと財務計画」など、早期退職を目指す人には気になる記事やPodcastが満載されています。
二人とも、経済的自立を実現するためには、リタイア前に会社に勤めながら、節約や貯蓄、投資で1億円前後を蓄えることが目安と考えているようです。
この金額は私の試算と同水準であることが分かりました。
FIREの底流には幸福の再定義ともうひとつ重要なことがある
米国で早期退職を目指す運動が広がっている背景は何か?
FIREは決して早期退職することが目標ではありません。
早期退職して自分が主導する人生を手にする運動です。
会社に雇われている限り、だれもが会社に人生を左右されます。人事や勤務先、給料、そして心を会社に主導される人生を送る必要があります。
出世して社長になったとしても、サラリーマン社長である限りは、大株主の意向は無視できません。大株主の要求内容によっては心を壊す社長もいますし、株主代表訴訟で巨額の損害賠償を要求され、人生が終わるリスクもあります。
しかし、経済的に自立して会社から解放されれば、誰もが自分自身で人生を設計し、好きな仕事や趣味に没頭できるようになります。
いつ、どこで、どんな仕事をするのも自由。家族とも多くの時間を一緒に過ごせる。旅行にも繁忙期を避けて、いつでも出発できる。趣味や投資、読書、ネットサーフィンも自由に楽しむこともできます。
中流生活を維持するために疲労困憊する人生か、それとも自分が主導する人生か。
FIRE運動の底流には、そんな「幸福の再定義」が背景にあると考えています。
親世代の過ちを繰り返さないために早期リタイアの準備をする若者たち
20〜30代の人たちが経済的な自立を目指して倹約や貯蓄・投資に励む背景には、もうひとつ親世代の過ちを繰り返したくないという思いもあるようです。
彼らの親は、2008年のリーマンショックでリストラされ、生活に困窮した世代です。企業に依存した人生のリスクを子供ながら感じたはずです。
企業に就職するのは安定収入を得て資産形成する過渡期的なものと考えています。会社は一生涯を捧げる存在ではなく、もっと大切なものがあると感じているのかもしれません。
企業が未来永劫、隆々として存在することはあり得ないことです。いつかは衰退期を迎えます。
不透明な企業の未来に人生を捧げるよりも、資金を早く貯めて退職し、自分が主導する人生を手にしたいと彼らが思い描くのはわからないではありません。むしろ共感を覚えます。
ただ、米国のFIRE運動を考察していると、これは決して米国だけの潮流には思えなくなってきます。
日本でも会社ではなく自分主導の人生を求めて、早期退職を目指し頑張っている人たちが少なくありません。
もしかしたら、口に出さないだけで、サイレントマジョリティー(静かなる多数派)がそう思っていると感じることがあります。
それは当ブログがスタートして4ヶ月余りですが、私が想定した以上にアクセス数が増えているからです。
アクセス数の増加は日本版FIRE運動が静かに進んでいる証左だと思っています。