あの手この手の保険商品を見極める力が大切
未来の危機に煽られてはいけない
長年、生きていこうと思えば、いろいろなリスクが気になるものです。
所帯を持って子供ができれば、自分が死んでも家族が生活できて子供が大学に進学できるように生命保険と学資保険を考えます。
私も、その2つは契約しました。
中年に差し掛かると、今度はがんになって公的保険の効かない先進医療や、休職中の生活費が心配になります。
そこで私は終身のがん保険に加入しました。
さらには、老後の医療・介護の費用も気になります。
気になるたびに保険に加入していては、マンションが買えるほどの保険料を支払う羽目になります。
どこかで、自分の心配を断ち切らなくてはいけません。
そのために必要なことはなにか?
それは知識です。
知識がなければ、保険会社の思う壺なのです。
超低金利時代の終身保険は避けるのが賢明
私はバブル期の1990年に定期つき終身保険に加入しました。
定期保険は掛け捨て。これは10年前に解約しました。
終身保険は満期(30年)をすぎれば、解約しても利息がついて相当な解約返戻金が振り込まれる保険です。「貯蓄代わりに」というセールストークで売られていました。
本当に貯蓄代わりになるのかどうか、判断する際に重要なのが予定利率という言葉です。
簡単に言うと、銀行預金の利息のような概念で、加入時の利率が続くので固定金利のようなものです。予定利率が高いと満期後に解約返戻金は多めに振り込まれます。
通常、予定利率は保険会社が運用した運用益が基本になりますから、高金利時代には利率が高いし、いまのような超低金利時代は低く抑えられます。
私が加入した当時の予定利率は実に約7%でした。やはり、金利もバブルでした。
いまや、どんな金融商品でも年利7%という商品は、詐欺的な金融商品でもない限りは存在しないと思いますが、バブル期は存在したのです。
このため、バブルが崩壊し、金利が低下した1990年台、保険会社は逆ザヤに苦しみ、挙句の果てには、高い予定利率で契約した人経ちに、予定利率の低い他の保険への転換を薦めました。
私の妻も、セールスレディーから「今度、お得な保険が出ましたので、ぜひ、ご説明したいのですが」と電話をもらって、何も知らない妻は、一度、保険を転換したことがあります。
しかし、その後、妻は、物凄く損なことをしたことに気づき、その日のうちに慌てて転換を取り消したことがありました。
この「転換」は、保険会社が「お宝保険」を消去するための悪質なセールスだったため、いまでは陰を潜めていると信じています。
金食い虫の医療保険は本当に必要なのか?
保険は勉強の差が出る世界
生命保険の「転換」で実感したことがあります。
それは保険会社は自社が得することは薦め、損する商品は解約させたがるということです。
ですから、保険会社が薦める保険商品は本当に自分にとって必要なのか、吟味する知識と勉強が必要なのです。
かりに「騙された」と思っても、よほど悪質でない限りは自己責任なのです。
保険会社も生き残りをかけて、契約者に勝つか負けるかの勝負を挑んでいるわけですから。
では、医療保険の基礎を考えます。
日本の場合、健康保険など公的な医療保険制度が充実していて、治療費が青天井にならないように制度設計されています。
その制度が高額療養費制度です。
70歳未満で年収が約370万円から約770万円の人は、かりに100万円の治療費がかかったとしても、本人が負担する医療費の上限は月額8万7000円程度なのです。
その程度の負担で済むのに、民間の保険会社に毎月数万円の保険料を支払いますか?
まず、そこが医療保険を考える出発点です。
医療費は貯蓄と都民共済でリスクヘッジ
公的な医療保険の充実ぶりを念頭において、次の2点を考える必要があります。
- 個室に入院したい場合、健康保険は使えない。その分は貯蓄か保険か
- がんの先進医療の場合、健康保険は使えない。その分は貯蓄か保険か
医療の進歩で、最近の入院期間は年々短縮されています。
がん治療の入院でも平均18日程度(平成26年データ)なのです。
その程度の個室代は貯蓄でカバーしたほうがお得です。
もうひとつは、がんの先進医療の治療費です。
いまは男性2人に1人、女性3人に1人ががんになる時代です。
とくにがんが奥深くまで浸潤している「悪性新生物」の場合、重粒子線治療や陽子線治療といった先進医療を利用したいという人も少なくないと思います。
保険会社のパンフレットには「治療費が300万円かかる」などと謳われています。ですから、がん保険は加入したくなります。
私も数年前に加入しましたが、リタイアを機に解約しようかと考えています。
というのは、私は2口で保険料が年間3万円ほどの都民共済に加入しているためです。月額3万円ではなく、年間3万円(実質)ですよ。
この保険は死亡時800万円、入院治療は1日9000円が保証されるうえに、先進医療にも対応しています。非営利の団体が元受けなので、低額の保険料が実現しているのだと思います。
私はリタイア後の医療費は、①健康保険②貯蓄③安い民間保険の順に考えています。
その結果、病気に対するリスクヘッジは、公的医療保険と貯蓄でカバーし、残りは都民共済というシンプルな布陣にする予定です。