大手企業の中年リストラ策で最も衝撃を受けるのは誰か?
中年リストラに怯えるのは中年よりも20〜30代の正社員
先日、富士通やNECなど大手企業が次々と45歳以上の中年社員のリストラ策を発表したことをお伝えしました。
今月19日には、経団連の中西宏明会長が「経済界は終身雇用なんて、もう守れないと思っている」と発言し、いよいよ、日本も終身雇用から欧米のような転職社会が近いという印象を持たれた方も多いと思います。
こうした一連のニュースに最も恐怖感を感じたのは誰でしょうか?
おそらく、中高年の社員ではなく、これから就活を控える学生や20〜30代の若手社員だったと思います。
30代の社員はあと10年もすれば45歳の中年社員になってしまいます。決して他人事には感じないはずです。
ただ、今回のリストラについて各企業は覚悟を持って発表したのでしょうか?
ロボットによる業務自動化がもたらす中年リストラの嵐
今回のリストラで象徴的だったのは、リストラ対象の世代だけでなく、非生産現場の社員が生産現場への配転を要求されたという点です。
非生産現場というのは、経理や総務、人事など、直接商品を開発生産していない職場です。
どうして非生産現場の社員が狙われたのか?
それは、大手企業がロボットによる業務自動化(Robotic Process Automation)、いわゆるRPAによって余剰人員が生じるからです。
RPAによってPCのソフトウェア型ロボットが人間に代わってデスクワークを代行してくれるので、人間よりも正確なアウトプットもしてくれると言われています。
RPAはこれまで人間が行ってきた定型的なパソコン操作をソフトウエアのロボットにより自動化するものです。具体的には、ユーザー・インターフェース上の操作を認識する技術とワークフロー実行を組み合わせ、表計算ソフトやメールソフト、ERP(基幹業務システム)など複数のアプリケーションを使用する業務プロセスをオートメーション化します。(出典:総務省)
私が勤務していた会社でも非生産部門の社員たちが一生懸命に便利なRPAを見つけてきて、「よくやった」と上司に褒められていました。
しかし、そのロボットが自分たちの職場を奪う切り札になったわけで、まさに現代版残酷物語のようでもあります。
若者がリストラ企業を見限る日が近づいている
日本は会社と労働者の暗黙の了解で折り合っていた
「我が社は45歳以上の中年社員はいらない。若い社員が欲しいのだ」「非生産部門の社員はロボットがやってくれるからいらない。会社に残りたいなら生産現場に異動してくれ」
こんな本音を感じる今回のリストラ策ですが、こうした中高年を切り捨て若年層を獲得しようとする企業の姿勢は諸刃の剣でもあります。
日本の企業文化は、2つの暗黙の了解で成り立ってきました。
- 会社は終身雇用という形で定年まで社員の面倒を見る
- 社員は最もお金のかかる中高年期の高給を期待し、若いころは薄給でも我慢する
一方、欧米はどうか?
- 会社は不要になればいつでも解雇する
- 社員は20代でも年間数千億円の高給を要求する
もしも、今後、日本企業が①中高年はいつでもリストラ②若い人材を積極採用という方向に舵を切るならば、それとパッケージで20代でも1000万円以上の高給を約束しなければ、優秀な若手は見向きもしないはずです。
なぜなら、20年後にリストラされる可能性があるなら、20年間で一生分のお金を稼ぎたいと考えるからです。
「薄給で働く優秀な若手社員が欲しい」というのは、あまりにも会社ファーストすぎます。むしろ、優秀な人材が集まらず、若者から淘汰される恐れがあります。
ただ、このままいけば、日本企業の人事政策は、若い人材を安く雇って45歳前後になったら別の会社への転職をすすめるというものになりそうです。
ですから、一流企業は逆張りして、終身雇用を打ち出すことによって安定志向の優秀な人材を集めるかもしれません。
「退職の時期は自分が決める」という気構えのススメ!
20〜30代の人や就職を控えている学生には留意してほしいことがあります。
それは「自分の人生は会社ではなく自分が決める」という気構えです。
会社にリストラ策を提示されてから慌てるような人生設計であってはいけないということです。
つねに心の片隅に「いつ会社をやめても生きていける」という強い気持ちを持って、具体的担保となる副業を必ず見つけておくことが重要です。
自分を救うのは自分自身しかありません。同時に、一度しかない人生ですから、自分で納得して人生の方向を決めたいものです。
ですから、少なくとも会社を辞める時期は自分で選択することが何よりも重要です。会社からリストラされたのではなく自分が見限ったと思える人生を実現して欲しいと思っています。
そのためにも会社に全面的に依存していては強い気持ちは持てません。
私は30年余りの間、会社員生活を経験し、ありがたいことに満足な人事と報酬をいただきました。
それでも、なおかつ、常に心のなかには、会社に全面依存していてはいけないという気持ちを持ち続けました。そのためにも副業を実践してきました。
そして、いま、幸せな早期退職は、普段の地道な副業にこそ解答があると実感しています。