大企業の5社に1社が正社員の基本給や賞与を減らす可能性
来年春スタートする同一労働同一賃金は正社員の給料引き下げも
来年4月から正社員と非正規労働者の不合理な待遇格差を是正する「同一労働同一賃金」が始まります。
その新制度導入を前に、人材会社「アデコ」が大企業を調査したところ、5社に1社が正社員の基本給や賞与を減額する可能性があることがわかりました。
この調査は2019年3月29日~4月1日、従業員300人以上の企業の人事担当者を対象に行われ、サンプルは500名ということです。(参考:アデコ「同一労働同一賃金導入に向けた準備の進捗状況と、導入後の見通しに関する調査」)
まず、正社員の基本給が減ると答えたのは19.9%。増えるという回答も同率です。
また、賞与についても19.1%が「減る」と約2割を占めました。一方、「増える」は13.2%にとどまり、非正規社員の待遇改善のしわ寄せは賞与に反映されてきそうな気配です。
それにしても、同一労働同一賃金が導入される1年前の段階で、すでに5社に1社、つまり2割の大企業が基本給や賞与を減らすと回答しているのは驚きです。
正社員の給料減額は当然の成り行き
2018年に厚生労働省が告示した「同一労働同一賃金のガイドライン」は、非正規と正社員の待遇格差を解消することによって「我が国から非正規という言葉を一掃することを目指す」と高らかにうたいあげています。
通常の労働者と短時間・有期雇用労働者及び派遣労働者との間の不合理と認められる待遇の相違の解消等の取組を通じて、労働者がどのような雇用形態及び就業形態を選択しても納得できる待遇を受けられ、多様な働き方を自由に選択できるようにし、我が国から「非正規」という言葉を一掃することを目指す(出典:厚生労働省「同一労働同一賃金のガイドライン」)
政府はまた、労使合意のない正社員の待遇引き下げは望ましくないともしていますが、企業の人件費は限られているため、正規社員の給料をカットして非正規社員に回す企業が相次いでも不思議ではありません。
売り上げが急増しない限り、正社員の給料減額は当然の成り行きなのかもしれません。
むしろ、働き方改革のように、他の企業が非正規の待遇改善に向けて正社員の給料減額に踏み切っているのを見て足並みを揃える恐れもあります。
不合理な待遇格差は改善されなければいけないのは当然のこと。それは正論だと分かっていても正社員にとっては懸念が広がりそうです。
同一労働同一賃金時代の会社員に必要な気構え
サラリーマンを取り巻く環境は前途多難
正規社員は入社時の成功が定年まで功を奏する時代が終わろうとしています。
非正規との待遇格差の解消に自分たちの人件費原資が回され、40代になると、今度はリストラか否かのふるいにかけられます。
一方、これまで複雑な思いで働いてきた非正規社員は徐々に待遇面の負い目は軽減されてくるでしょう。しかし、待遇が改善されたとしても、それで将来安泰というわけには行きません。
というのも、日本は中国など隣国を見下している間に、リノベーション(革新)の希薄な国になってしまいました。
逆に、「模倣国家だ」とバカにされていた中国は、若い世代が米国企業などでスキルと知識を身につけ、あらゆる分野でイノベーションを生み出しています。
DJI、ファーウェイ、テンセント、アリババ・・・・先端企業が続々と米国企業と世界市場で競争を繰り広げています。
一方、資源の少ない日本は、国民の頭脳とスキルがイノベーションという付加価値を生み出し、富を蓄積してきました。しかし、いまや、かつての面影もありません。
では、金融はどうか?
「AI(人工知能)の時代だ」と新たな金融サービスで金鉱脈を探っています。
しかし、銀行が手数料目的で投資信託を販売し「お客様が損をしても自分のため」という本音を見せてしまった以上、住宅ローンや預金口座以外に銀行の金融サービスを積極的に利用するとも思えません。
人口減少で国内の購買力が低下し、世界からマネーを吸収するイノベーションも希薄。
日本企業は収益力が弱り、正社員であれば、あるいは正社員並みの待遇になれば、これから安泰という時代ではなくなったのです。
ハイブリットなサラリーマンを目指すことが重要
では、どうしたらいいのでしょうか?
それは自分自身が”株式会社”になればいいのです。
株式会社と言っても、何も株式を発行して資金を集めて事業を展開するというわけではありません。
自分自身を株式会社に見立てて自分自身の収益力を強化するということです。
たとえば、富士フイルムという企業があります。
かつては写真フィルムを製造・販売する最大手でしたが、カメラはフィルムカメラから、フィルムを必要としないデジタルカメラに変遷しました。このため、2000年当時、売上の6割、利益の7割を締めていた写真フィルムが売れない時代が到来したのです。
しかし、富士フイルムは、収入源を医薬品や医療機器、化粧品や健康食品の製造・販売にも拡大。その結果、2019年3月期は、連結売上高が2兆4314億円、営業利益が前期比70%増の2098億円で最高益を更新しました。
これからのサラリーマンが多難なことは分かっているのですから、給料以外に自分の収益力をどう高めるのか、じっくり考えることが重要です。
サラリーマンにとって、給料は富士フイルムの写真フィルム事業のようなものです。45歳になったらもらえなくなる可能性があるからです。
しかし、給料以外に副業で収益力を高めていれば、いずれ給料以上に稼げる分野が見つかるかもしれません。
大切なことは未来を予見し、先回りする精神。そして実行です。