公的年金の不足分を株式投資でカバーできるのか?
ゆとりある生活には月35万円必要。公的年金の平均支給額は22万円
誰もが老後はお金を気にせず、ゆとりある生活を実現したいと願っています。
そのために、サラリーマンの多くが厚生年金の保険料を毎月支払い、節約して残ったお金を貯蓄に回し、老後資金を貯めています。
では、ゆとりある老後に必要な生活費は、いくらなのでしょうか?
生命保険文化センターが全国4056人(18〜69歳)を調査した結果によると、夫婦2人でゆとりある老後を送るために必要な生活費は月額34.9万円だったということです。(参考:平成28年 生活保障に関する調査(速報))
しかし、現実には、厚生年金の平均支給額は、夫婦で月22万円ほどにすぎません。
ゆとりある生活には約13万円不足することになります。
ゆとりある生活の不足額を投資信託でカバーするのは賢明なのか
私は15年間、株式投資を趣味の一つにして、過去、それなりに利益をいただきました。勉強すればするほど、難しく、それでいて楽しい世界だと考えています。
きょう、ある証券会社のサイトをのぞいたら、ゆとりある老後に不足する13万円について、積立投信による補填を推奨するPR記事を見かけました。
証券会社は株を売るビジネスですから、「脱貯蓄」の流れを作って、株や投信を買わせようとするのは当然です。
ただ、私には、投資と老後の生活費を関連づけることには、何か釈然としないものが残りました。
その釈然としないものの正体とは何だったのか?
4割が損失を抱える投資信託の難しさ
昨年、金融庁はメガバンクに対し、顧客に買わせた投資信託の運用成績を開示させました。
その結果、昨年3月時点で4割が損失を抱えていたことが判明したと報じられました。
株式市場は昨年暮れから年初にかけて大荒れとなり、日米の株式市場を中心に株価は急落しました。損失を抱えた個人投資家がさらに増えている可能性もあります。
株式投資や投資信託はうまく付き合えば、一生の趣味になりますが、大きな損失を抱えている人が少なくないのも事実です。
ですから、株式投資や投資信託と、どう向き合うのか、その姿勢と目的が大切です。
私は株式投資はゲームと割り切っている
株式市場は農耕民族ではなく狩猟民族の世界
先ほど申し上げたように、私の株式投資歴は15年になりました。
しかし、私は老後資金を貯める目的で投資はしないことにしています。
人間というのは、期待値が高まると合理的な判断ができなくなります。
多くの人が、確実に増える貯蓄よりも、投資信託の方が有利なものだという信じています。
その信仰心の原因はなにか?
根拠なき期待感です。
宝くじを買っただけで、当たった時のことを妄想し、あれこれ使い道を考えてしまうことに似た現象かもしれません。
株式投資には、当然、リスクがあります。しかし、リスクとリターンは比例します。
リスクがあるからこそ、株式相場で勝者は多額の富を手にすることができ、その勝者の前には死屍累々の敗者が生まれるのです。
つまり、株式市場は農耕民族の畑ではなく、狩猟民族の狩場なのです。
食うか食われるかの狩場にもかかわらず、「積立投信を老後の生活費のために貯蓄感覚で」と言われてしまうと、私は矛盾を感じてしまうのです。
きっと、5歳児のチコちゃんに叱られます。
「ボーっと生きてんじゃねーよ!」
老後資金の貯蓄と株式投資は切り分けて考えよう
では、株式投資は手を出さない方がいいのでしょうか?
私は「ノー」です。
ただ、投資の目的や姿勢、個々人の年齢や知識量によって答えが異なってきます。
私は株式投資を積極的に実践していますが、老後資金の貯蓄と株式投資の運用は切り分けて考えています。
なぜなら、投資は大儲けできるかもしれませんが、貯蓄としてはあてにならないからです。
老後資金のために投資すると、大きな含み損を抱えた時に恐怖感に襲われ、不必要な損切りをしてしまうものです。
人間は、得することよりも、損することに心を動かされる動物だからです。
株式投資は世界の政治・経済情勢を読むマクロ的な分析力と、個別企業を判断するミクロな分析力を競う知的マネーゲームです。
ゲームである以上、私は失ってもかまわない余裕資金を投資しています。
非課税のNISA口座で投資するのが理想的
最後に、今年の私の投資姿勢を述べたいと思います。
私は昨年暮れから早期リタイア生活に入りました。
この15年間で株式市場には1000万円ほど投じ、ほぼ放置投資ですが、利益は800万円ほどになりました。
リタイア元年の今年、新たにNISA口座を開設して運用しようと考えています。
NISAは株の売却益や配当金が非課税(約20%)になるため、投資の利回りが2割向上するからです。
ただ、株式投資は決して老後の生活資金が目的ではありません。楽しいリタイア生活を実現することが目的です。
株式投資の結果、儲かるかもしれませんし、損失を被るかもしれません。ただ、老後資金と切り分けている限り、株式投資で失敗しても生活が厳しくなることもありません。
「株式投資や投資信託は知的マネーゲームと割り切る」
この気持ちは今年も持ち続けたいと考えています。