ホリエモンが言及した年金積立金の運用実態は?
「税金泥棒」に続いてホリエモンがツイートした年金問題
昨日は、金融庁の”老後2000万円不足”報告書をめぐって、16日(日曜日)に都内で繰り広げたデモに対し、ホリエモンこと、堀江貴文氏(46歳)が「そんな時間あったら働いて納税しろや。税金泥棒め」とツイートして炎上した問題を取り上げました。
今回は、その続編です。
前回は「そんな時間あったら働いて納税しろや。税金泥棒め」とツイートした内容の妥当性と、そのあとにホリエモンがツイートした内容の重要性について解説しました。
今回は、ツイート内容の後半部分を解説したいと思います。
この問題を報じたスポーツ報知によると、ホリエモンは年金積立金の運用実績にも言及しています。
「基金の運用だってアクティブになって運用益かなり上がってる。最近四半期ベースで損を出してもあまりセンセーショナルに報道されなくなったのも良い傾向。だって長期運用で益をだすのが彼らの本分だからね。そして我々ができることは税収を増やすために効率よく稼ぐ事だ。これは誰にでも出来る事」と主張した。(出典:スポーツ報知)
この発言は、少し説明が必要です。
厚生労働省(旧厚生省)は、もともと旧大蔵省に年金積立金を預けて運用していました。
一方、旧大蔵省は、預託された年金積立金を財投機関に融資して公共事業などに活用、その金利を還元していたわけです。
しかし、国が年金積立金を管理・運用するのは行政の肥大化や利回りが低いという指摘もあり、国内外の株式などにも投資先を拡大して運用することになりました。
具体的には、2001年から厚生労働省が国とは別の組織GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)に年金積立金を預けて運用を開始しました。
これを「自主運用」といい、GPIFは国内外の株式や債券で運用しています。
では、公的年金の将来を左右するGPIFの運用実績はどういう状況なのでしょうか?
年金積立金の運用実績は17年間で10兆円の利益
GPIFの運用実績は、厚生労働省が公開していて、年度ベースの最新情報は今日現在、「平成29年度 年金積立金の運用状況について」という資料になります。
タイトルは和暦なので分かりにくいかもしれませんが、2017年度の運用状況です。
その資料によると、2017年度の年金積立金の運用実績は、6.52%(約10兆円)でした。運用実績は単年度で判断するのではなく、長期的な推移で判断することが重要です。
厚生労働省によると、GPIFによる運用が始まった2001年度以来、平均利回りは3.21%、累積利益は約74.4兆円になっています。
下記のグラフは運用実績の推移を示したものです。
国債で運用したら、こうした運用利回りは無理だったでしょう。なかなかの成績と言えるかもしれません。
ホリエモンが「最近四半期ベースで損を出してもあまりセンセーショナルに報道されなくなったのも良い傾向。だって長期運用で益を出すのが彼らの本分だからね」とツイートしているのは、まさに、この点を指しています。
つまり、GPIFの運用益が不調でもセンセーショナルな報道が少なくなったことを評価し、長期的な運用で判断することの重要性を説いています。
その点はホリエモンの言う通りだと思います。
しかし、この主張によって、デモの参加者が「税金泥棒」というツイートが正当化されるわけではありません。
「それはそれ、これはこれ」と分けて考えるべきです。
ただ、年金運用に続いて、ホリエモンが述べている点も大切な視点だと感じています。
それは何か?
批判は批判として個人レベルで稼ぐ努力が必要だ
「誤解して政府を批判しても何も始まらない」のか?
ホリエモンは、今回の老後2000万円足りない問題について「誤解して政府を批判しても何も始まらない」と述べています。
正直なところ、私も「老後2000万円不足」問題でデモというニュースを見た時、「そんなことをする暇があったら、副業や起業といったビジネスに精を出した方が建設的なのに」という思いを持ちました。
ホリエモンは「大衆を先導するのが商売の奴らに騙されず、それぞれが人生を楽しんで納税するべく努力する社会が理想と思う」と、率直な気持ちを表現しています。
参院選を控え、年金問題で大衆を扇動しようとする野党に騙されず、人生を楽しみながら稼いで納税する努力するのが理想的な社会だと言いたいのだと思います。
デモ参加者の中には、”老後2000万円不足”報告書を受理せず、不都合な事実はなかったことにする安倍政権の手法に憤慨し、野党を応援したいと参加した人もいるでしょう。
政治活動の自由は国民の権利です。
ただ、ホリエモンを批判したところで、事態は何も変わりません。
では、今回の「老後2000万円不足」という問題に、どう向き合うべきなのでしょうか。
国民が経済的な不安から身を守る方法とは?
私が金融庁の報告書を取り上げたのは、政府・与党内で問題化する前の6月6日でした。
その頃は、まだ報告書案という段階でした。
その後、野党から批判が噴出したため、金融庁は一部文言を修正し、報告書として正式に発表しました。
ところが、与党内からも「年金不安を煽る内容だ」と批判が相次ぎ、金融庁所管の麻生財務大臣が「報告書は受け取らない」とまで言い出し、現在に至ったわけです。
その最初の6月6日のブログで、私は「政府を批判しても自己満足にはなるかもしれませんが、金融資産が増えるわけでもありません。むしろ、時間の無駄遣いになるだけです」と指摘しました。
そのうえで、「大切なのは、一刻も早く、金融資産を増やす行動に着手することです」と、老後に向けて早い段階から副業など何らかの対策が必要だと申し上げました。
いまも、その考えは変わっていません。
人間というのは他人を批判することで満足してしまい、自分が直面する現実に向かって問題解決する姿勢が緩む傾向があります。
今回、政府を批判するのは各人の自由です。
ただ、重要なことは、収入を増やし資産形成するにはどうしたらいいのか、いますぐ真剣に考え行動することだと思います。