私のオーナー会社が20年以上成長し続けた理由
22年前に300万円で始めた会社
私は50代で大手企業を早期退職したあと悠々自適なリタイア生活を送っていますが、ひとつ楽しみなことがあります。
それは自分が所有する会社の成長です。
この会社は私が30代のとき、妻を社長にして発足しました。
当時、私はサラリーマンですから、会社経営はできません。そのため、私が妻に300万円を出資し、会社経営をスタートしました。
現在は少額の資本金でも株式会社の設立は可能ですが、当時は、株式会社の設立には最低1000万円の資本金が必要でした。
しかし、当時30代に私には1000万円も初期投資するのはやや重い出費でした。しかし、妻が調べたところ、資本金が300万円でも有限会社ならば設立できることを知り、当初は有限会社でスタートしました。
有限会社の要件は以下の通りでした。
- 資本金が300万円以上
- 社員数が50名以下
- 取締役の任期に期限がない
- 決算の公告義務がない
有限会社は基本的に株式会社とは変わりませんが、取締役の任期に期限はなく、決済の公告義務もないため、家族経営や個人事業には適した制度でした。
ただ、2006年の商法改正で新たに有限会社を設立できなくなったため、現在も生き残っている有限会社は設立後10年以上経営が続いていることにもなります。
ちなみに、私の会社は設立22年となり、その間、倒産・廃業する会社も、気づくと現在は老舗と呼ばれるようになりました。
中途採用を廃止!新卒採用・終身雇用にこだわる理由
最近、大手企業が45歳以上の中高年をリストラする一方、スキルの高い人材を年収数千万円で採用するといったニュースが相次ぎました。
日本企業も猛スピードで欧米型の雇用・人事形態に移行しています。
しかし、私の会社はその流れに逆行し、10年ほど前から新卒採用に絞りました。
その動機は、10年ほど前に世界中を震撼させた2008年のリーマンショックです。
リーマン不況のあおりで、新卒の学生は就職難にあえいでいました。
有能でありながら、大手企業に採用されず、溢れた人材を私のような零細企業でも獲得できるのではないかと考えたのです。
企業にとって雇用自体が社会貢献です。
自活できる社会人を増やし、国に税金を納め、社会インフラの整備や社会保障の充実に貢献できるからです。
我が社の業界は即戦力になる中途採用が大半です。新卒採用して時間をかけて一人前に育て戦力にするという会社は皆無です。
その代わり、中途採用の会社は社員が短期間で退職するなど社員の出入りが頻繁です。
必然的に会社の空気も殺伐としたり、社員に対する経営者の愛情も希薄になりがちです。
では、新卒採用・終身雇用にこだわった結果、私の会社はどうなったのでしょうか?
しょぼい会社が成長できるかどうかは社員の能力と愛社精神
しょぼい会社が2年先まで受注が埋まっている理由
正直言って、会社設立後の最初10年は売り上げも収益も低空飛行でした。
社員に給料を振り込むのが精一杯という時期もありました。
しかし、人材重視に舵を切って、新卒採用をスタートしてから2年ほどで効果が現れ始めました。
クライアントから次の仕事も途絶えることなく、この5年間で売り上げが3倍増。再来年まで受注が満杯で、大手からでも仕事のオファーを断っている状態です。
価格交渉もクライアントが提示した3割増を要求することもありますが、それでも飲んでもらえる状態になりました。
新卒採用・終身雇用にこだわった会社が、なぜ、クライアントから評判が良いのか?
まずは、社員の能力と雰囲気が良いと言われます。
新卒で入社し愛社精神があるためか、社員は会社のイメージや評判を低下させまいと一生懸命です。
もちろん、採用段階では筆記試験など基礎学力や人柄を入念にチェックするので、社員に素質があるのは間違いありません。
会社経営にとって能力とともに愛社精神は大切だと感じます。
ただ、新卒で採用したから愛社精神が生まれるかというと、それだけではないと考えています。
社員に愛される会社になる条件とは?
私の会社は、新卒採用を始めてから、大手広告代理店に転職した一人を除いては早期退職者はゼロという状況です。
社員にとっては居心地が良いようです。
私なりに、その原因を分析してみました。
- 業界トップクラスの給料や待遇
- 有給休暇の完全消化
- 不要なミーテイングの廃止(多くとも週に1回)
- クライアントに対し土日・祝日や夜間の稼働を禁止を求めるなど残業の根絶
- 会社内で他人の陰口や批判を禁止・注意点は会議で出し合う
- 定年退職者には子会社を設立し高齢でも面倒を見る
まずは、何と言っても給料が大切です。
少ない給料で残業させて使い捨てにするブラック企業は一時的には稼げるかもしれませんが、長い目で見れば、経営者が社会から捨てられるものです。
もうひとつは社内の雰囲気。社長である妻が最も敏感な部分です。
他人を傷つけるような言動はただちに注意しています。私でも妻に怒られたら怖いですから、社員は当然、怖いと思うはずです。
さらには、ミーティングを極力廃止しました。
必要なことはLineやメールで事足ります。私もサラリーマン時代はミーティングの多さで閉口したものです。
ミーティングの多くは幹部を交えて決定したという既成事実づくり。責任回避の道具のようなものです。大企業になればなるほど、その傾向が強まります。
ですから、サラリーマン根性の凝縮されたミーティングにはうんざりしたものです。
大手企業が中高年のリストラなど欧米型の人事政策に転換するのは致し方ないのかもしれません。
ただ、会社の規模に関係なく経営者が心がけるべきことがあると考えています。
それは、会社を生かすも殺すも社員の能力と心だということです。