迷走する年金改革と自分年金の重要性とは?
高額所得の高齢者を優遇する年金改革が進行中
2020年の制度改正に向けて厚生労働省は公的年金の見直しを検討しています。
今回の改正の狙いは、世代間のバランスです。
政府は社会保障改革の司令塔となる「全世代型社会保障検討会議」を発足させ、今年9月から、年金や医療、介護、労働など社会保障全般の見直しに着手していますが、「世代間のバランス」という年金改革の方向性も「全世代型社会保障」の流れに沿った考え方ともいえます。
では、「世代間のバランス」とは何か?
現在の検討状況を見ていると、現役世代の負担を抑制するために高齢者も保険料を支払う側に回ってもらおうというものです。
「労働」という点では企業に対する70歳定年制の推奨がすでに打ち出されています。
これに加えて、年金制度も高齢労働者の年金を減額する「在職老齢年金制度」を見直す方向で検討が進んでいます。
現在の在職老齢年金制度は、60〜64歳の人は月収28万円を基準に年金が減額されます。さらに65歳以上の人は月収47万円を超えると年金が減額される仕組みです。
これに対し、厚生労働省は10月9日の社会保障審議会(年金部会)で、60~64歳、65歳以上のいずれも減額基準額を62万円以上に変更する案を提示しました。
つまり、月収60万円の高齢者でも年金を満額支給できる内容です。
高齢者を働かせるために年金を利用する功罪とは?
高所得の高齢者を優遇するという年金改革案は副作用も伴います。
年金を減額されない高齢者が増えると、その分の財源(2018年度の減額分は約8000億円)が必要になります。
早速、与党内からは「将来世代の年金悪化につながる」「高所得者優遇」といった批判が噴出し、厚労省は月収50万円台に修正する方向での検討を余儀なくされました。
高齢者にも働いてもらうことで、年金を受け取る側から年金保険料を支払う側に回って欲しい。
厚労省の改革案には、そんな狙いが込められています。
しかし、高齢者の働くモチベーションを高めるために年金優遇が必要なのか?
今回の改革案は二律背反的な内容だけに論議は迷走しているわけです。
この論議には、2つのポイントがあります。
- 高齢者が高給な場合、年金支給額を減額するべきか、可能な限り満額支給するべきか
- 年金支給額の調整で高齢者の働くモチベーションは変化するのかどうか
ただ、誰もがお金のために高齢になるまで働こうと考えているわけではありません。
むしろ、人生後半は会社に束縛されず、趣味や社会貢献など生きがいを求める生き方を選択したい人も少なくないはずです。
年金制度に左右されずに、人生後半に自己実現するために必要不可欠な考え方があります。
それは、年金はもらうだけでなく自分でつくるものだという考え方です。
年金を「もらう」から「つくる」ために重要なこと
自分年金はいくら必要か?私の場合は年間180万円と試算
年金を「もらう」だけでなく、自分で「つくる」ことを考える前に大切なことがあります。
それは究極の不労所得は公的年金であることを忘れないことです。
ですから、20〜30代で退職してフリーランスになるよりも、40〜50代で早期退職する方が年金保険料を長期間多めに支払っている分、はるかに将来の不労所得が多いということです。
私が50代の早期退職が望ましいと申し上げてきたのは、この不労所得に直結するからです。
自分が将来もらえる年金支給額を確認したうえで、不足分の自分年金をいかに構築するのか、これが出発点となります。
私の場合、夫婦で年金支給額は約380万円。税金や各種保険料を差し引かれると、手取り300万円余りと想定しました。
高齢になっても月収40万円ほどで生活することを仮定し、年間必要な手取り収入は480万円になります。
ですから、自分年金の目標額は、次のようになります。
- 目標の自分年金→年間生活費480万円−手取り年金300万円=年間180万円
将来の年金動向が不透明なため、年金の手取り収入はやや少なめに見積もりました。
そのうえで、年間の生活費から年金の手取り額を差し引き、不足分を算出しました。
その結果、私が必要な自分年金は年間180万円でした。
自分年金は投資だけでは危険だ
金融庁が「年金だけでは老後2000万円不足」という報告書案を発表したあと、20〜30代の若い世代を中心に非課税のNISA口座に申し込みが殺到しました。
将来のために株式や投資信託で資産形成するのも、立派な自分年金づくりといえます。
私も15年前から株式投資に着手し、現在は年間30〜40万円の配当収入を得ています。
ただ、株式は誰もが先を見通せない不確実な資産でもあります。
ですから、次の株式投資を自分年金に組み込む際、私は次の2点に留意しました。
- 株価が2倍以上に上昇した銘柄は半分売却し、投資資金を回収する
- 残った保有株はタダ株なので長期間にわたって配当だけに着目する
- 自分年金は株式だけに集中せず、株式以外の副収入も模索し続ける
株式市場はファンダメンタルズだけで動く相場とは限りません。極度の楽観や悲観で乱高下する鉄火場です。
ですから、株価が急騰した際には、迷わず半分売却するという自己ルールを課しました。
半分売却したことで投資資金は全額回収し、残った保有株はタダ株です。
その結果、株価の騰落を全く気にせず、安定的に配当収入を得ています。
確かに、株式投資は運用次第では心強い自分年金になってくれますが、株式投資だけに依存するのは危険です。
次回は、次に私が考えた自分年金を紹介したいと思います。