ハラスメント上司が出世する理由とは?厚生労働省の若手官僚が異例の訴え【厚生労働省の業務・組織改革のための緊急提言】

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厚労省の若手官僚がブラックな職場を暴露する緊急提言

厚労省の若手官僚がブラックな職場環境を公表した

労働や医療、年金、介護まで、幅広い国民生活を担っているのが、厚生労働省という中央官庁です。

その厚労省の若手官僚が、自分たちの職場がいかにブラックな状態なのか、異例の緊急提言を発表しました。

それが、8月26日に発表された「厚生労働省の業務・組織改革のための緊急提言」で、厚労省の「厚生労働省改革若手チーム」(20〜30代を中心とする38人の職員)が作成しました。

改革若手チームは、全ての人事グループの幹部・若手にヒアリングや対話、2回の大規模な職員アンケートを実施。さらに、若くして退職した元官僚14人にもヒアリングして提言をまとめました。

組織の不都合な事実が判明するかもしれない調査や提言には上層部が制止するものですが、それを容認した上層部も立派です。

提言の内容ですが、冒頭で、なぜ、このような提言をまとめたのか、その理由に触れています。

楽をしたいとか、待遇を良くしたいとか、些末な動機によるものでは全くない。我々が就職活動のとき、激務と知られ、批判に溢れた厚生労働省の門を叩いたのは、今、この瞬間も、この国のどこかで、厚生労働省の所管行政による支えを求める 人々がおり、そうした人々の暮らしを少しでも良くしたいと思ったからである。

厚生労働省が、今、そのような職員の思いを十分に受け止められず、国民から求められる社会保障・働き方改革を十分に推進できる組織でないならば、一刻も早く、この組織の抱える課題を解消し、個人と組織の持つ能力とパフォーマンスを最大化して、真に日本の社会経済・国民生活の向上に資する、信頼される組織に再生させるべきである。(厚生労働省の業務・組織改革のための緊急提言

官僚特有の回りくどい文章なので、簡潔に翻訳すると、「就職活動のとき、激務であっても国民の暮らしを少しでも良くしたいと思って厚生労働省に入省した。しかし、職員の能力を十分に発揮できない職場環境では国民生活も向上させることはできない。そう考えて緊急提言を発表した」と言いたいようです。

いずれにしても、志を抱いて入省した若手官僚が理想と現実の乖離に苦しんでいる実態を示唆する文面でもあります。

冒頭は役人特有の分かりにくい文章ですが、緊急提言の中身は圧巻でした。

そこには、厚労官僚の驚くような労働実態や精神状態が赤裸々に綴られていました。

言葉を失うような心情の吐露が相次いだ

今回の緊急提言は、職員の苦悩や意識が明記されている点が特徴です。

実際、若手チームのメンバーも「同じ厚生労働省の職員として、言葉を失う意見が相次いだ」と述べています。

では、どんな意見が飛び出したのでしょうか?

  • 「厚生労働省に入省して、生きながら人生の墓場に入ったとずっと思っている」 (大臣官房、係長級)
  • 「毎日いつ辞めようかと考えている。毎日終電を超えていた日は、毎日死にたいと思った」(保険局、係長級)
  • 「仕事自体は興味深いものが多いと思いますが、このような時間外・深夜労働が当たり前の職場環境では、なかなか、一生この仕事で頑張ろうと思うことはできないと思います」(労働基準局、係員)
  • 「家族を犠牲にすれば、仕事はできる」(社会・援護局、課長補佐級)
  • 「今後、家族の中での役割や責任が増えていく中で、帰宅時間が予測できない、そもそも毎日の帰宅時間が遅い、業務量をコントロールできない、将来の多忙度が予測できないという働き方は、体力や精神的にも継続することはできないと判断した」(退職者)
  • 「子供がいる女性職員が時短職員なのに毎日残業をしていたり、深夜にテレワーク等をして苦労している姿を見て、自分は同じように働けないと思った」(退職者) 

ギリギリの精神状態で働いている人が少なくないことが分かります。

現役職員は「生きながら人生の墓場に入ったと思った」「毎日、いつやめようかと考えている」「死にたいと思った」と悲痛な思いを吐露しています。

また、早期退職した職員は、このままでは人間らしい生活ができないと悩みながら先々を見越して早期退職を選択したことが分かります。

ただ、総じて深夜残業がとても多いことがうかがわれます。

では、彼らを苦しめている労働実態は、どこに原因があるのでしょうか?

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若手官僚は古手官僚と人生観が変わった

私の知る官僚たちは古い価値観だったのかもしれない

私の親戚や知人など周囲には現役やOBの霞ヶ関官僚が少なくありません。

年齢によって価値観が異なると感じることもあります。

私の知る限りでは、50代以上の昭和入省世代と、平成中盤以降に入省した世代では、官僚の目的意識が変化しているとも感じます。

官僚の労働環境に最も影響を与えているのは国会答弁です。

野党議員の質問を事前に入手し、大臣答弁を作成するのが重要な職務になっています。国会答弁に忙殺されるのは、厚労省だけでなく他の省庁にも共通する課題でもあります。

官僚は委員会での大臣答弁に間に合うように、深夜の作業になってしまいます。とくに、自分の役所が提案する法案がある場合、答弁づくりは熾烈を極めます。

さらに、法案をめぐる答弁以外にも、労働問題や医療・年金問題が社会問題化した場合、あるいは不祥事への答弁も準備する必要があるため、作成資料は膨大な量となります。

「国会質疑は大臣と質問者にガチで対決させたらいいではないか」と考える人もいるかもしれませんが、細かい数字や制度の仕組み、過去の答弁内容を質問されることも想定されるため、大臣に丸投げというわけでも行かないというわけです。

ただ、国会質疑から離れた役所職員にとっては、その答弁作業が国民生活にどう直接貢献しているのか、その意義を見出せず、心を病む人が現れるのも理解はできます。

官僚の目的意識や自己実現の方向は変化している

一方で、昭和世代は世の中全体が深夜残業が当たり前の風潮で仕事をしてきた世代でもあります。

むしろ、政治家に重用される官僚になるためにも、寝食を忘れて尽くすことが優秀な官僚だと信じてきた世代です。

国会議員は国民が選んだ人たち。だから、公僕たる官僚が国会議員のために尽くすことは国民に尽くす擬似的行為というわけです。

実際、親しい政治家が総理大臣など重要なポストに就任すると、自分も栄転しますし、逆に、その政治家が失脚すると左遷ポストに送られた官僚も少なくありません。

官僚の天下りに甘い時代は、たとえ左遷されても天下り先の処遇というもう一つのご褒美がありました。

しかし、最近は、もともと天下りを期待して入省する人は減ってきています。

以前、財務省主計局の幹部に「もう財務省に未来はありません」と言われたこともありました。

この場合の「未来」は天下り先も含めた先行き、そして仕事の充実感ではないかと思ったものです。

官僚という仕事を通じて社会貢献したい、自己実現したい、そんな若手官僚が増えているように感じます。

一方で、最近の官僚は「公僕」から「政権の私僕」に成り下がったという批判もあります。

ですから、入省時の理想と現実とのギャップ、心の良心や葛藤、家庭生活との両立に悩みながら、日々働いている官僚が増えているのかもしれません。

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若手社員が管理職を望まない理由 管理職になりたい社員より望まない社員が多い調査結果 最近、大学時代の友人たちと話していると「若手社員が管理職を望まなくなった」という話をよく聞くようになりました。 私が会社員時代にも若い社員はポストに対する意欲が希薄でした。 果たして一般的にはどうなのでしょうか? リクルートマネジメントソリューションズが2017年3月に発表した「新人・若手の意識調査」によると、管理職志向がある新人は3割にとどまり、2010年(55.8%)と2013年(45.0%)の調査に比べて減少傾向をたどっていることがわかりました。(参考:「新人・若手の意識調査2016」) この調査は、全国の正社員801人を対象に実施したもので、管理職に「なりたい」「どちらかといえばなりたい」人は31.9%。逆に「なりたくない」「どちらかといえばなりたくない」人は37.9%で、管理職にな...
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霞ヶ関の労働環境は誰が変えるべきなのか?

中央省庁や国会内の労働環境は旧態然のまま

緊急提言の中で、厚生省の若手チームは様々な対策を提言しています。

  • 業務の集約化・自動化・外部委託
  • 保存書類や決裁の完全電子化
  • 国会答弁関連業務の効率化
  • 国会答弁のデータベース化
  • 質問通告の2日前ルールの徹底
  • 委員会でのパソコン・タブレット利用の解禁

どれも、「なるほど」と思うものばかりです。

なかには、「委員会でのPC・タブレットの利用解禁」のように、国会のルールが旧態然であるために、最新ツールを利用できず、苦労している面もあるようです。

小さな改善を一歩一歩を積み上げることはもちろん大切です。

しかし、霞ヶ関の労働環境は大きなフレーム(枠組み)を変えないことには解決しないと思われます。

霞ヶ関の官僚を苦しめている国会答弁の準備。

基本的には質問通告の締め切り厳守や、さらに決め切りを早めること、公開されている細かな数字については質問を原則禁じるなど、政治家の協力なしでは解決できないことばかりです。

厚生官僚が労働実態を改革するなら、元厚生大臣の小泉純一郎氏が総理大臣に就任した時が最大のチャンスでした。

しかし、小泉氏がいない以上、これからは別の戦略が必要です。

労働環境の改善は官僚トップの仕事ではないのか

霞ヶ関の仕組みを変えるのはトップの仕事です。

ですから、もう一人、頑張らないといけない人がいます。それは官僚トップの事務次官です。

事務次官まで上り詰めたのですから、もう保身に走る必要はありません。残りの任期は職員の労働環境を守るために、嫌われる覚悟を持って政治家に働きかける努力をするべきです。

緊急提言は構造的な課題について、次のように言い切っています。

霞が関全体に通じる問題であるが、事務次官や局長であっても、政治との関係では一プレイヤーにすぎず、むしろその政官関係においては、管理職としての手腕よりも、政策的な知識や調整能力の方が評価される傾向にある。このため、仮にハラスメントを行うような上司であっても、政策上の能力が高ければ出世してしまい、その部下のマネジメントがなおざりになってしまうことがありうる。

ハラスメントというマイナス点と、政治家との調整能力というプラス面を天秤にかけると、政治家との調整能力が優先され、出世してしまうことを暴露しているのです。

民間企業であれば、営業成績の良い社員がパワハラやセクハラを免除されているようなものです。

これはブラック企業根絶を目指す役所としては最初に着手すべき問題です。

次に着手するべきことは、政治家の協力を取りつけることです。

民間企業はクライアントに忙殺され、霞ヶ関の官僚は政治家に忙殺されています。

東大卒の高橋まつりさんが過労自殺した電通は、社員の夜間残業を禁止しました。

サラリーマン時代、「クライアントとの関係上、夜、会社で仕事ができないのはつらい」ともらす社員が少なくなかったと聞きました。

人手不足でドライバーが対応できないと判断したヤマト運輸は、アマゾンの「当日配送」から撤退しました。

当然、撤退に伴う売上減少は覚悟したはずです。

どんな改革にも弊害は伴います。

厚労省の若手官僚が発表した緊急提言は、最終的に政治家や事務次官ら幹部が動かなければ、実現しないことばかりです。

その際、相手はまるで役人のように、改革に伴う弊害や前例を並べ立てるかもしれません。

しかし、若手官僚は「前例は無視して弊害も覚悟してください」と開き直る迫力がなければ、今回の提言は提言だけに終わりそうな予感もします。

若手の覚悟とトップの覚悟、ともに必要な緊急提言だと感じました。

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コメント

  1. 国会議員の質問通告時間を各役所が議員名とともに公表すれば、元手もいらずできると思います。それにマスコミが喰いついてくれればなお良いでしょう。
    政治家自身の自浄作用は期待できないです。

    • 通告時間の可視化、透明化ですね。とても良いアディアだと思います。
      あとは、野党をはじめ議員が応じるかどうかですね。
      官僚が覚悟を決めて要望しないといけませんね。

  2. まずは行政文書として作っておけばいいのです。
    情報公開法で開示は義務付けられてますから。
    これであれば役所の中だけで完結する話かなと。
    仮に圧力かけられたらマスコミにリークするとか。

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