人手不足で早期退職を認めない労働紛争が増えている
退職代行サービスがリピートされる理由
働き方改革が進んだとはいえ、企業は様々な人間の集団です。
「人が3人集まると派閥に別れる」と言われるほど、不和もない集団はありえません。
しかも、職務を遂行するうえで上司と部下といった上下関係が生まれますから、パワハラも発生しがちです。これだけは、長年、良質な社員を採用し続けない限り、防ぎようがありません。
そんなパワハラや長時間労働で心身ともに追い詰められたサラリーマンが、近年、退職代行サービスを使うようになりました。
とくに、夏休み明けの予約が殺到していると報じるメディアも現れました。
確かに、私でも会社に退職願を提出するのは、億劫なことでした。
「なぜ、会社を辞めるのか?」
この質問には辟易した覚えがあります。
ましてや、パワハラや長時間労働で心身ともに疲弊しきっている人にとっては、会社に通勤するだけでも辛いのに、さらに退職願を提出する行為はハードルが高いのかもしれません。
「辛い思いを回避できるのなら、退職代行サービスに数万円支払うのはコスト安」と考える若者がいても不思議ではありません。
むしろ、自分を守るために合理的な行動なのかもしれません。
人手不足ゆえに悪質な慰留が横行!
一方、人手不足のご時世、企業も必死です。
今の会社を辞めて転職したいにも関わらず、退職を認めず、転職に必要な離職票さえ渡そうとしない。
こんな悪質な会社があとを絶ちません。
厚生労働省に「会社が自己都合退職を認めてくれない」と相談してきた件数は、会社の不当解雇を上回りました。(参考:厚労省「平成30年度個別労働紛争解決制度の施行状況」)
経営者から突然クビを言い渡されたという相談よりも、会社が退職させてくれないという苦情が多いということです。
過去10年間、厚生労働省に持ち込まれた相談内容の推移が下のグラフです。
グラフを見ると、働き方改革で時短や育休、有給休暇の確保が進みましたが、一方で「いじめや嫌がらせ」が急増しています。
もうひとつは、平成28年度から「解雇」よりも「自己都合退職」、つまり会社が退職させてくれないという相談が上回っていることも分かります。
厚労省の資料には、相談事例も公表されています。
申出人は、正社員として勤務していたが、退職するため、会社の就業規則に従って上司に退職届を提出して意思を伝え、後任の早期採用 を依頼したが、上司から「退職は認めるが、後任が概ね一通りのことができるようになるまで辞めないでほしい」と言われ、希望日での退職を受け入れてもらえなかった。退職の意思は強かったので何度も伝えたが、結論が出ないうちに話し合いは打ち切られた。 希望の退職日に退職できるよう話合いを行いたいとして、助言・指 導を申し出たもの。
上記の事例のように、上司が「退職届を提出しても後任が決まるまでは辞めないで欲しい」「後任が一通り仕事を覚えてから辞めて欲しい」と希望退職日を遅らせようとすることは、どんな企業にも日常茶飯事のような気がします。
しかし、会社の規程に基づいた退職の意思表示(退職届提出)であり、雇用関係解約の申し入れから2週間を経過すれば、民法の規定で雇用は終了すると定められており、上司の行動は法令に抵触する疑いがあるのです。
人手不足によって悪質な慰留が横行しているということです。
合わない会社は即座に辞めて次に進むのが最適解
早期退職は前向きな人生設計でもある
終身雇用を前提としてきた日本社会では、いまでも早期退職は悪のようなイメージがあります。
しかし、終身雇用に経営者も社員も疑問を抱くようになるにつれて、近い将来、早期退職は前向きな生き方だとイメージが変化するはずです。
むしろ、ひとつの会社に定年までは働く人は米国のように「他の会社も欲しがらない無能な人」と見られてしまう可能性もあると考えています。
実際、多くの企業では会社にぶら下がろうとする中高年の扱いに困っています。
ですから、昨年から今年にかけて、大手企業が中高年社員のリストラを相次いで発表したのは当然なのかもしれません。
では、中高年ではなく若手社員の退職はどう考えるべきなのでしょうか?
若手社員と呼ばれる期間は長いようでいて、実は10年余りしかありません。
合わない会社に我慢して在職し、心を病んでから退職しても、自分自身の市場価値は恐ろしく低下している可能性があります。
ですから、心を病みそうな会社で働くサラリーマンが、退職代行を利用してでも、次のステップを急ぐのは極めて賢明な判断だと思います。
退職代行サービスの特徴とは?
いまや、早期退職するサラリーマンの多くが利用する退職代行サービスですが、20代の若者2人が立ち上げた「EXIT」はパイオニア的存在です。
少子高齢化による人手不足で、企業がなかなか辞めさせてくれない。
こんな風潮が強まった2017年に日本初の退職代行サービスとしてスタートしました。
NHKやテレビ朝日、TBS、フジテレビ、日経新聞、朝日新聞、毎日新聞など大手メディアに取り上げられると利用者が殺到。すでに利用者は累計2500人以上の退職を実現しました。
退職代行の料金は正社員が5万円、アルバイトやパートが3万円。
「EXIT」は知名度とリーズナブルな料金、さらに転職サポートが受けたのもしれません。
「EXIT」の成功をきっかけに、退職代行サービスが次々誕生しました。
そのひとつに法律事務所の汐留パートナーズ法律事務所も参入しました。
弁護士が退職に直接対応する点で「EXIT」とは差別化をはかっています。(「EXIT」は弁護士のアドバイスを受けながら業務を行なっています)
汐留パートナーズ法律事務所は着手金が5万4000円。そのほかオプション費として経済的利益の20%の成功報酬となっています。