死ぬまで働くか、自由に生きるか、選択する時代が到来する?
経団連会長に続いてトヨタ社長も「終身雇用は厳しい」と発言
4月に経団連の中西宏明会長が「終身雇用を続けるのは難しい」と発言し、SNSなどネット上では様々な反応が相次いだことをお伝えました。
この発言は経済界の本音だとも申し上げました。
昨日13日、今度は日本のトップ企業・トヨタの豊田章男社長が「なかなか終身雇用を守っていくというのは難しい局面に入ってきたのではないか」と発言したことが報じられました。
中西経団連会長は日立出身ですから、日本のナンバー1と2の企業の首脳から、終身雇用に赤信号を灯す発言が相次いだことになります。
企業は新卒で採用した社員を高齢になるまで正社員として雇用し続けるメリットを感じなくなっているのかもしれません。
最近は、能力さえあれば、転職が容易に可能な時代です。入社後の能力に関係なく、新卒採用者を定年まで無条件で雇用することにメリットを見出せなくなっているのかもしれません。
そんななか、政府は70歳を過ぎても働く人が厚生年金に加入できる制度を検討しようとしています。
70歳以降も働いてもらって厚生年金の保険料も支払い続けてもらおうというわけです。
今後、70歳以上になっても働いた人には、年金の受給額がどれだけ増額されるのか、様々な試算が報じられると思いますが、なにか釈然としない人も多いと思います。
企業は終身雇用を辞めたがっているのに、政府は70歳以上になっても働くことを奨励しているようにみえるからです。
誰も分からない大命題!「あなたは何歳まで生きますか?」
もちろん、生活が苦しい人にとっては70歳以上になっても働き、年金を増額してもらえる環境が整うのはありがたいことかもしれません。
しかし、定年まで働けず、企業文化も異なる慣れない会社を転々としながら、70歳以上まで働く人生は送りたくないという人も少なくないはずです。
そんなストレスフルな会社員人生を長年続けるくらいなら、せめて60歳を過ぎたら、ゆっくり自由に生活したいと考えるのはおかしくはありません。
会社を転々としながら、死ぬまで働く人生を選択するのか?
それとも早期リタイアして好きなことをしながら心穏やかに生きる人生を選択するのか?
サラリーマンは働き方改革と同時に、生き方改革を迫られるのかもしれません。
高齢になっても働くのが美徳とされる時代は恐ろしい
政府と企業には高齢者の雇用について真逆の意識を感じる
政府が高齢者にも働いて欲しいと考えるのは、人口減少で人手不足に陥っているからです。
それ以上に、危機的な状況の年金財政のために、高齢者には年金保険料を支払う側に回って欲しいのです。
一方、多くの企業は高齢者は不要だと考えています。
昨年から今年にかけて富士通など大手企業が相次いで45歳以上のリストラを発表しましたが、企業が欲しい人材は賃金が安くて機敏に働く若手社員です。
ですから、政府と企業は高齢の労働者については、同じ方向を向いていないのです。
実際、私の周囲でも「企業に年寄りを押し付けられても困る」「60歳を超えた社員を雇用延長したくない」という本音を漏らす経営者も少なくありません。
肝心の企業側が、終身雇用に疑問を持ち、45歳以上をリストラしているなかで、多くの会社員が高齢になっても働くのは幸せなことなのでしょうか?
人間いは承認欲求があります。
高齢になって給料が減らされても「自分は必要とされている」という思いがあるからこそ、頑張って働けるのです。
しかし、「あのおっさん、まだ会社にしがみついているんだ」と言われているような気分を抱きながら、70歳以上まで働くのは精神的にも相当辛い人生になると思うのです。
人間を経済価値や労働価値で計る風潮を懸念する
このまま高齢者を労働力に組み入れる動きが進むと、高齢になっても働くのが美徳であり、リタイア生活し自由に生きている高齢者は怠慢というおかしな風潮が台頭してくるかもしれません。
なぜなら、最近、人間を経済価値や労働価値で計る人たちが増えていると感じるからです。
生活保護を受給者や無職の高齢者は社会に不要だという風潮です。
「明日は我が身」です。
誰しも年老いて働けなくなる時がきます。経営者や高級官僚だって退任するときは来るのです。仕事や事業に失敗し貧困生活に転落する人だっています。
だからと言って、人間としての価値の人ではありません。
高齢になって働く事は悪いことではありません。しかし、高齢になっても働くことが美徳とされる社会にはなってほしくないと思います。