60歳以降も働きたい人たちの切実な理由とは?
60歳以上でも再雇用する企業が一般的になった!
「人生100年時代」を謳い文句に、死ぬ寸前まで働かせようという機運が高まっています。
最近は多くの企業で65歳まで雇用延長が進んでいますが、さらに政府は70歳まで雇用を伸ばせないか検討を本格化しています。
表向きの理由は、健康寿命が伸びて70歳でもまだまだ元気なため。しかし、本音は労働不足と年金財政の逼迫対策だと思われます。
厚生労働省が発表した高年齢者の雇用状況によると、65歳まで雇用する企業は99.8%を占め、65歳定年という企業は16.1%に上っています。(参考:厚生労働省・平成30年「高年齢者の雇用状況」集計結果)
いまや、65歳まで雇用する企業が一般的になりました。
しかも、66歳以上でも働ける企業は27.6%、70歳以上でも雇用する企業は25.8%と、4分の1を占めている状況です。
まさに、少子高齢化社会の縮図を見る思いです。
給料が半減されても老後働きたい人の本音は?
では、60歳以降も再雇用して欲しいという人はどれだけいるのでしょうか?
今年1月に発表された内閣府の世論調査によると、「61~65歳」まで働きたい人が30.7%で最多。続いて「66~70歳」(21.5%)、「51~60歳」(18.8%)の順でした。(参考:内閣府「老後の生活設計と公的年金に関する世論調査」)
また、70歳以上になっても働きたい人は、次のような比率でした。
- 71 歳~75 歳 9.2%
- 76 歳~80 歳 4.3%
- 81 歳~85 歳 1.3%
- 86 歳~90 歳 0.4%
- 91 歳以上 0.9%
ご覧のように、71歳以上でも働きたい人は合計16.1%に上っています。
再雇用の希望の理由は「経済的ゆとり」「生活費が足りない」
内閣府の世論調査は、なぜ、高齢になっても働きたいのか、その理由も聞いています。
次のような順位でした。
- 「経済的にゆとりある生活を送りたい」(28.9%)
- 「働き続けないと生活費が足りない」(24.9%)
- 「仕事をするのが好き」(16.9%)
高齢になっても働きたいのは、仕事に生きがいというよりも、経済的な理由が圧倒的に多いことが分かります。
とくに、「働き続けないと生活費が足りない」という人たちが全体の4分の1を占めています。
この調査からは、明るい未来ではなく、生きるために老後も働かざるを得ない切実な思いが伝わってきます。
高齢社員は本人も周囲も不幸になると思った!
60歳以降も元幹部社員が一兵卒で働く悲哀と不幸
私が早期退職した会社も60歳の定年後も65歳まで再雇用する制度がありました。
実際、元幹部社員でも再雇用制度を利用して働く人は少なくありませんでした。
給料は半額以下。もちろん、再雇用後は一兵卒です。
なぜ、彼らが再雇用制度を利用したのか?
仕事に意義を感じている人は皆無で、ほとんどが経済的な理由からでした。
一度離婚し中年になって再婚したため、まだ子供の教育費が必要だと言う人。現役時代に貯蓄することができず、60歳以降も働かないと老後の資金が足りないと言った先輩もいました。
もっとも気の毒だったのは、海外生活の資金を貯めたいと、65歳まで働き、仕事を辞めた数ヶ月後になくなった先輩のことです。
その先輩は何度も海外に下見に行っていて、海外生活の楽しさを語っていた姿がいまだに忘れられません。
高齢労働は幸せの入り口か?地獄の入り口か?
私は60歳以降も再雇用されて働く姿には、正直行って、良い印象を持ちませんでした。
それは、寿命には限りがあるということです。
いくら人生100年時代といっても、60歳以降はいつ死んでも大丈夫なように準備すべき年代に入ります。
その残された人生の時間を会社のために捧げることが果たして幸せな人生だろうかと疑問を感じるからです。
もうひとつは、若い社員にとっても、高齢社員が決して良いことばかりではないということです。
もちろん、ベテラン社員の経験や知識は若い社員にも勉強になることは少なくないと思います。
しかし、再雇用される高齢社員にも、いろいろな人がいます。
元管理職の立場をひきづっている人は、若い社員の言動を黙視できないものです。管理職時代の延長線上で現役社員に接しますから煙たがれます。
しばらくすると、誰も話そうとしなくなり、60歳過ぎた人生としては寂しい会社員人生になるものです。
「明日は我が身」老後の準備は必要不可欠
年金制度や雇用制度の話になると、それは高齢者の話だと思う人が多いものです。
しかし、今後の制度改革で最も影響を受けるのは、現在の20〜40代の人たちなのです。
むしろ、50代以上の世代は、現在の制度のもとで老後の人生を終えますから、大きな影響を受ける確率が低下します。制度の改革はその下の世代にいずれ降りかかります。
ですから、自分はまだ若いと思っている人でも「明日は我が身」なのです。
60歳以降の高齢になっても会社に再雇用を認めてもらってサラリーマンで生きるのか?それとも、それ以前に複数の収入源や資産を構築して悠々自適に生きるのか?
人生観は人それぞれです。
ですから、どんな人生が絶対に幸福と言えませんが、少なくとも死ぬ直前まで会社に人生を支配されるのは嫌だと言う人は、静かに、黙々と、準備を進める必要があります。