お金をつけないと不動産が売れない時代が来た!
北海道室蘭市がマイナス881万円で市有地を売却
不動産を買うということは、所有に伴うコストも背負い込むということです。
ですから、どんな格安な建物や土地、マンションでも、所有後の費用を計算し、トータルでお得かどうか考える必要があります。
とくに、業者が不動産を購入する場合、そのトータルコストが見合わなければ、どんなに安い不動産でもなかなか手を出しません。
そんな事例が先日、朝日新聞に報じられていました。
北海道室蘭市が福祉センターの敷地5642㎡を881万円の現金付きで売却すると発表したというニュースです。
北海道室蘭市は1日、閉館した福祉センターの敷地について、入札によりマイナス881万4千円で売却することになったと発表した。落札者側が建物を解体することが条件。室蘭市によると、自治体が負担金を支払って公有地を処分するのは全国で2例目という。
対象は「市総合福祉センター」の敷地約5642平方メートル。新しい施設が完成し、昨年10月末に閉館した。市は人口がピーク時から半減しており、不要になった公共施設の集約を進めている。従来は建物を解体し、更地にしてから売り出していたが、解体費用が障害となり、処分が進まないケースもあったという。(出典:朝日新聞)
敷地面積5642㎡の土地ですから、都内であれば、立派なマンションが建てられる面積です。
しかし、人口減少の激しい地方では、土地の上に建物を建てても事業で採算が取れるか、厳しい時代になっています。
ましてや、上物があれば、その解体に多額の費用が必要になりますから、物件価格をいくら下げても買い手がつかない恐れがあります。
このため、室蘭市が発表した現金付きの敷地売却は苦肉の策とも言えますが、今後、同様のケースが全国に広がることも考えられます。
老朽化したリゾートマンションも負動産化の危機
では、私たちが日頃、よく目にする居住用マンションやリゾートマンションは大丈夫なのでしょうか?
どんに綺麗に企画開発された街やマンションでも必ず到来することがあります。
それは、住民の高齢化と建物の老朽化です。
かつてサラリーマンにとって憧れの街だった多摩ニュータウンは、いまは高齢化と戦っています。
昭和から平成にかけて苗場などのリゾートマンションはユーミンの曲に乗って庶民を夢心地にさせました。
しかし、スキーブームが去り、老朽化とともに、いまはなかなか買い手がつかず、数十万円で取引されている状態です。
苗場に限らず、地方のリゾート物件は需給が悪化し、売りに出しても買い手がつかず、何年間も放置状態になっている物件も珍しくありません。
いま、若い人は将来不安を抱え、税金や駐車場、ガソリン代など余計なコストが必要なクルマを持たなくなっています。
ドライブを楽しむよりも、自宅でパソコンやゲーム、オンデマンドの映画を鑑賞する方が楽しいという時代です。
室蘭市のように、リゾートマンションもまた、10年間の管理費や固定資産税分の現金をつけないと売れない時代がくるのではないかと危惧しています。
相続した地方の一戸建て住宅は誰が住むのか?
私の周囲に、親の残した一戸建て住宅の管理で苦労している後輩がいます。
ご両親が亡くなり、相続した家を売ろうにも売れず、結局、妹さんと2人で空き家を管理しています。
家は誰も住んでいないと傷みが進みます。雑草もあっという間に生えてきます。ご両親の住まれていた家が気になるので、長期休暇には帰郷し家の管理をする生活を強い入られているといいます。
地方は若い人が大都市圏に転出し、人口減少が進んでいます。
親が残した家やお墓を誰が管理するのか?
家が売れたり、借りてくれる人がいるのなら、御の字です。しかし、誰も住んでくれない物件を抱え、捨てるに捨てられず、苦労している人は少なくないはずです。
それでも、家を所有している限り、非情にも固定資産税の請求が届きます。
少子高齢化とともに、ニッポンは”負動産”が増えているのです。
少子高齢化の日本が直面する不動産の社会的課題とは?
湾岸タワーマンションの人気と不安
老朽化したマンションや建物は、いずれ取り壊して建て替える必要があります。
建て替え方式などによって違いはありますが、マンションの場合、60㎡の部屋で建て替え費用はおよそ2000万円と言われています。
しかも、老朽化したマンションは比較的、高齢者が多いため、残り少ない余生のために多額のお金を手放すことを嫌がる人もいますから、建て替えは一筋縄にはいきません。
ただ、普通のマンション以上に、将来、大きな社会問題になりそうなのがタワーマンションの建て替えです。
現在、若い世代を中心にタワーマンションは人気です。
ロビーがホテルのように立派で、ゲストルームやスポーツジムなど多彩な設備が完備されているためかもしれません。
私にも、港区のタワーマンションを購入し、「先輩、景色が最高ですから遊びに来てください」と言ってくれる後輩が数人います。
ある後輩は海外勤務の辞令が出たので、住んでいたタワーマンションを売りに出したところ、購入時と同じ値段で売れたと喜んでいました。
こんな声を聞くと、タワーマンションは人気があるんだなと思います。
ただ、タワーマンションは、40年後、50年後、いったい、どうなるのだろうかと考えるときがあります。
タワーマンションは取り壊しと建て替えに巨額費用が予想される
40〜50年後、私は生きていないと思いますが、子供達にはできれば避けた方がいいと話しています。
というのも、一般的なマンションでも60㎡ほどで建て替え費用が2000万円です。
しかし、タワーマンションは取り壊すだけで、想像を超えた費用がかかりそうです。しかも、新たに摩天楼のような高層マンションを建てるわけですから、その費用は莫大です。
資金力のある人は、建て替えを見越して、10〜20年後には大幅に値下げしても売り切って引っ越しするでしょう。
残った住民は高齢化と貧困化という問題に直面し、老朽化したタワーマンションの建て替えを困難にするかもしれません。
「愚者は経験を語り 賢者は歴史を語る」
その格言に則れば、リソートマンションの歴史が何か示唆を与えてくれそうです。
不動産と負動産が紙一重の時代に生きる
どんな不動産を選んだらいいのかという問いは、株式投資家がどの銘柄を選んだら良いのかと聞くことと同じです。
不動産も買ってみて時間が経過しないと分からないものです。
ただ、普通のサラリーマンにとって、不動産への支出額は株式投資の比ではありません。値上がりは無理だとしても、いざという時に売却できる不動産物件を選びたいものです。
そのためには勉強することが重要です。
ところが、日本人は人生最大の買い物になる不動産について意外に勉強していないものです。
私も20代に初めてマンションを購入したあと、勉強を始めました。ですから、不勉強のせいで高い授業料を支払うことになりました。
所有と賃貸のどっちがいいかと聞かれたら、都心の場合は所有の方がメリットがあると思いますが、どんな物件が良いかと聞かれたら、正直なところ自信がありません。
ただ、ひとつだけ言えるのは、建物のかっこよさを考えなければ、マンションよりも一戸建てが優れていると感じます。
なぜなら、一戸建て住宅は駐車料金が無料で管理費もなく、メンテナンスや建て替えの有無も自己責任でコントロールできるからです。