7月1日時点の基準地価が1991年以来、27年ぶりに上昇しました。
この値上がりは、不動産投資を考えている人に関係のある話なのでしょうか?
私は1990年前後のバブル期後半、不動産を高づかみしました、
その名誉ある失敗談をもとに、不動産投資家が今回の地価上昇をどう捉えるべきなのか考えたいと思います。
バブル期に不動産が上昇した本当の理由
27年ぶりの上昇でも商業地が上昇し住宅地は下がっている
不動産の値上がりで資産デフレに歯止めがかかったという報道も目にしましたが、本当でしょうか?
27年ぶりの地価上昇といっても、商業地が住宅地の下落をカバーしたに過ぎません。
今回の基準地価の特徴は次の通りです。
地価が上昇したのは企業間取引が熱いのであって、庶民が売買する住宅地は低調だということです。
自分が住むための実需から購入する個人客と異なり、企業間の取引は景気が悪化すると激しく低迷するものです。
商業地の地価上昇はあてにはなりません。
爆発的に不動産を高騰させるのは企業よりも個人
バブル前の1985年、私の家族が東京・渋谷区のマンション(45平米)を2000万円で購入しました。
5年ほど自分で住み、バブル期後半の1991年に売りに出しました。
さすがにバブル期、しかも渋谷区という立地の良さもあって、間もなく売れました。
しかも、その値段は6200万円でした。たった5年で3倍の値上がり。これがバブル期の威力だったのです。
当時、なぜ、人々は不動産に熱狂したのか?
銀行がジャブジャブ融資したのも事実ですが、個人が値上がりを期待して、どんどん買いまくったからです。
個人を不動産に走らせたトンデモ理論
人々が一斉に買いに入ったとき、不動産は信じられないような上昇曲線を描きます。
では、なぜ、誰もが不動産は上がると信じたのか?
それは、「日本は国土が狭く、使える土地は限られている。だから不動産はまだまだ上がる」というトンデモ理論が大手を振っていたのです。
正直言って、私も、この理論は一理あると思っていた一人です。
しかし、数年後、日本は1ドル=80円台の円高に襲われ、採算が取れない日本の工場や企業は海外に移転。あちこちに工場跡地が誕生しました。
当然のことですが、このとき、土地は世界中に無限大にあることを誰もが認識し、同時に国内の不動産も長期下落時代に入ったのです。
もちろん、「日本の国土が狭いから土地は上がり続ける」などといったトンデモ理論は消え去りました。
人口減少時代の不動産は所有から利用の時代に
不動産投資するなら持ち家率が全国最低の東京一択
「持ち家が得か、借家が得か」という論争がありますが、家族の形態や収入の状態によって異なり、一概には答えの出ない論争です。
これはナンセンスな議論ですが、実態は知っておいてもいいと思います。
持ち家は全国で約60%。地方から住み着いた人が多い東京は45%で全国最低です。
ですから、「地方は物件価格が安い」といってアパートやマンション投資をしようものなら、空き室対策に追われて、悠々自適なリタイアどころではなくなります。
一方、東京で不動産投資をするには、物件価格が高すぎて、今度はローンの支払いが心配で、心穏やかなリタイア生活の足を引っ張ります。
超富裕層の人は別にして、リタイア後に多額の借金を背負って不動産投資するのは賢明な選択ではありません。
むしろ、不動産投資は失敗してもリカバリーの可能な30~40代から始めるべきなのです。
買い急ぐ不動産投資家は最終的に失敗する
ここからは、かつて失敗した私の経験値をもとに、不動産投資の勘所を述べたいと思います。
物件を探し始めると、不動産屋さんは契約を取りたいがために「この物件、ほかにも関心のあるお客さんがいまして、明日、下見することになっています」と殺し文句を言うものです。
その時は、「どうぞ、その方に売ってください」と聞き流す余裕を持ってください。
また、地価が上がり始めると、今度は自分の心の中で「いま買わないと、買える物件がなくなってしまうかもしれない」と、いらぬ心配の声がささやくものです。
バブル期にマンションを高づかみした私が、これでした。
バブル期で買える物件がなく、焦ったのが失敗でした。値上がり不安も無視して大丈夫です。
なぜか?
日本はこれから本格的な人口減少時代に入るからです。
不動産が安くなることはあっても、手が届かなくなるほど高くなることはあり得ません。
むしろ、待てば待つほど、駅近のきれいな物件が登場するかもしれません。
不動産投資は買い急がないことが最も大切です。