銀行は個人の良きパートナーになれるのか?
メガバンクが投資信託の「脱手数料」に着手
やはり、この日が来ました。
日本経済新聞の電子版を見ていたら、大手銀行が投資信託の販売方法を見直していると報じていました。
メガバンクの雄・三菱UFJ銀行は投資信託など運用商品の販売額を銀行員の業績評価から完全に外したほか、他の銀行も投資信託の販売からは距離を置き始めたということです。
銀行が手数料目当てに投資信託を売る問題は「高齢者が資産運用で注意すべきこと」に書きましたが、金融庁が運用成績を開示させたところ、4割は損失を抱えていました。
「資金運用のお手伝いをさせてください」と言って投資信託を薦め、手数料収入をもらったあとは、顧客が損をしようが、「運用成績は自己責任」という姿勢では社会は納得しません。
自分から進んで投資信託を購入した人は別として、お金のプロが知識の乏しい人に投資商品を安易に薦めてはいけないのです。
最近、銀行を見つめる個人の目は厳しいと思います。
要らないと言っても晴れの日には傘をさしてくれようとするし、雨の日には傘を取り上げようとする。そんなイメージが定着しました。
自分たちはリスクに敏感なのに、預金者にはリスクを取らせる行為は、多くの行員たちも複雑な思いを持っていたと思います。
今回の「脱手数料」で、一番ホッとしているのは多くの銀行員たちではないかという気もしています。
大手銀行は法人融資で稼ぎ、個人には奉仕の理念を持ってほしい
いま、メガバンクを中心に、IT(情報技術)やAI(人工知能)の進歩がによって、大きな変革の時代に入ろうとしています。
多くの銀行が採用人数を減らし銀行全体の行員数も自然減でスリムにする計画です。
一方で、新たなビジネス分野として、金融(Finance)と技術(Technology)を結びつけた金融サービスを模索しています。
最近、よく耳にする「フィンテック(FinTech)」がそれです。
仮想通貨や融資、国際送金など、さまざまなサービスが発表されています
フィンテックによる金融サービスの出現で、我々顧客が低コストで利便性の高いサービスを受けられるならば、歓迎すべきことです。
しかし、投資信託の販売手数料が稼げなくなったがゆえの新たな収益源として、フィンテックを見つめているのならば、銀行に対する信頼はますます低下すると思います。
銀行の本流は、企業を育て助け、社会を豊かにすることです。その利益を個人に還元するくらいの理念を持ってほしいものです。
少なくとも、ネット空間の覇者・グーグルには、そうした理念を感じます。
Googleの個人サービスは無料の精神
寝たきりになっても無料で世界旅行ができる
私は海外旅行に出発する際、世界遺産をグーグルマップで確認することがあります。
ホテルや名所、レストランなどが、まるで、その場にいるような感覚で調べることができます。
しかし、旅行先に行って、下調べはやるべきではなかったという感覚に襲われるときがあります。
それはなぜか?
行った先々に既視感があって新鮮味を感じなくなるからです。
それほどグーグルマップはリアリティーと利便性があります。自分が寝たきりになっても、ネット上で海外旅行できる気さえします。
でも、こうしたサービスは無料です。
普段、何気なく使っているGoogle検索だって、考えてみれば、凄いサービスです。
無料で世界中から様々な知識を得ることができるのです。
こうしたGoogleの個人に無料サービスを提供し、企業からは広告・サービス料を得て収益化するスキームは実によくできたビジネス戦略だと感心させられます。
Googleがなぜ急成長を遂げることができたのか?
それは提供するサービス(検索やマップ、メールなど)の品質の高さであり、安さ(無料)であり、大きなマーケット(企業)を見据えた収益化戦略です。
一方、銀行はバブル崩壊後、企業融資が細り、収益先を個人ローンや投資信託・生命保険の販売手数料に求めました。
まさにGoogleとは真逆の戦略でした。
銀行は原点に戻るこが先決
銀行が尊敬されたのは、戦後、企業が資金不足のときに、預金を集め、その預金を法人貸しすることで企業を育て日本経済の急成長に寄与したからです。
だからこそ、「バンカー」という呼称は特別な響きがあったのです。
小銭稼ぎに走らず、大きなマーケットを見据えた戦略こそ、いまメガバンクが優先すべきことだと感じます。
優れた理念や精神は行員を鼓舞させ、社会の信頼につながるものです。
次に考えることは、個人が利用するフィンテック派生サービスはすべて手数料無料にするための施策です。
すべて無料にして、それではどこから収益を得るのか?
真剣に考えれば、自ずと答えは出るはずです。
フィンテックが第二の投資信託にならないことを祈るばかりです。