新築マンション契約率が27年ぶりの低水準というのは凄い
駅から5分超のマンションは苦戦
予想していたことではありますが、2020年の東京五輪を前にマンションの契約率は急低下しています。
2018年の新築マンションについて、日本経済新聞は販売を開始した月の契約率が27年ぶりの低水準になったと報じました。
新築マンションの市場が曲がり角にさしかかっている。不動産経済研究所(東京・新宿)が22日にまとめた首都圏の2018年の統計では、販売を始めた月の戸数のうちどれだけ契約に至ったかを示す「初月契約率」が平均で62.1%で27年ぶりの低水準となった。人件費上昇などで価格は下落しそうもなく、共働き世帯の需要が底堅い駅前を除けば市場の減速が鮮明になっている。(出典:日本経済新聞)
不動産経済研究所が発表した2018年度の首都圏マンション市場動向を見ると、平均価格は前年同月比123万円ダウンの5896万円になりました。しかし、まだまだ高値です。
私の周辺でも70〜80平方メートルほどのマンションが7〜8000万円で売りに出されていますが、誰が買うのかと思います。これだけ割高なマンションを余裕を持って買えるサラリーマンはさほど多くはないはずです。
また、投資目的でマンションを購入する人は物件価格が下がり始めると、暴落を待って手を出さなくなるものです。むしろ保有物件の処理に走ります。
契約率の低下は物件価格の高止まりも原因のようですから、さらに売れ行きが悪化すれば、急落する可能性があります。
駅から5分超はNG!買い手の選択眼が向上した
マンションは「立地が命だ」と申し上げてきました。内装は自分たちでリフォームできますが、立地ばかりはどうしようもないからです。
しかし、最近は消費者のマンションリテラシーが向上してきたようです。日本経済新聞は次のように報じています。
長谷工総合研究所によると、駅から徒歩5分以内の物件は18年(上期)に全体の45%を占めた。供給ピークの00年には3割しかなかったが、じわりと増えている。不動産助言会社トータルブレイン(東京・港)の久光龍彦社長は「5分を超えると苦戦する物件が増える」と語る。(出典:日本経済新聞)
マンションは自由が制限されるアパートメントです。にもかかわらず、マンションを選択するのは、次のような利点があるからです。
- 駅近など立地条件が良い
- カギひとつで済む安全性
- 図書館やゲストルームなど共有スペースの利便性
- コンクリート造りの安心感
利点はほかにもあるかもしれませんが、とくに駅近は絶対に外せない条件です。
記事に書かれているように、消費者が立地条件で妥協しなくなったのは、物件の豪華さに惑わされず、立地を重視する不動産リテラシーが向上したためだと思います。
マンションと一戸建ての違いは何か?
私は、マンション→一戸建て→一戸建ての順に住宅を3回買い換えてきました。
新婚当初は駅から徒歩2分ほどのマンションに暮らしました。
子供が生まると、妻が「壁ひとつで区切られたマンションは上下左右のご家庭に気を使うので、一戸建てに引っ越したい」と言うようになりました。
マンションは購入してまだ2年ほどだったので人に貸して、一戸建てを購入しました。その選択は正解でした。
一戸建て住宅の利点は次の通りです。
- 物件価格の割に部屋数がたくさん取れる
- 毎月の駐車場料金や管理費がかからない
- マンションに比べて売却時の減価率が低い
我が家は車を2台所有しているため、駐車場代のかからない一戸建てはとても助かっています。また、最初に住んだ一戸建ても、売却した際にはマンションほど大きく値下がりしませんでした。
それでも、私がマンションを選択することがあるとすれば、極めて駅に近いという立地上の魅力しかありません。
ただ、今回のマンション異変は過去に経験した教訓と同じ光景をイメージしてしまうのです。
その教訓とは何か?
要注意!既視感のある中国マネーの動き
首都圏のマンションは中国マネーの動きに要注意
東京など大都市圏のマンション値上がりは、政府の超低金利政策と中国など海外の投資マネーが牽引しました。
超低金利政策は相変わらずですが、海外の投資マネーは変調の足音を響かせています。
最近は「かつて中国人投資家が大量に購入した湾岸のマンションの売り物がでている」(不動産会社)との声もきかれる。経済減速下での資金流出を警戒する中国当局の規制強化を受け、海外の不動産購入に向かっていた「中国マネー」が本国に回帰しているもよう。(出典:日本経済新聞)
しかし、投資家の目線に立つと、今回の不動産変調は当然の動きだとも思います。
投資家はイベントが予定されている国や都市に投資マネーを注ぎ込み、イベントが始まる前に資金を回収するからです。
私は過去に中国・北京五輪で同じ動きを目の当たりにしました。
北京五輪を待たずに中国・香港株バブルは崩壊した
いまから10年ほど前の2008年、北京五輪が開催されました。
北京オリンピックが近づくについれて、中国株は上昇し、香港ハンセン指数は過去最高値を記録しました。
しかし、北京五輪の開催を待たずに株価は暴落しました。中国株に資金を仕込んでいた投資家たちが売りに転じたのです。
北京五輪の前年2007年に、香港ハンセン指数は年末終値が27812ポイントでしたが、北京五輪が開催された2008年は48%安の14387ポイント。実に半値まで暴落したのです。
中国の場合、日本と違って不動産は国有ですから、投資家の多くは株式市場に投資資金を投じました。その分、株価は急上昇し、売りに反転すると下落幅も大きくなったのだと思います。
次は東京五輪が狙われているかもしれません。
日本の場合は株式市場だけでなく不動産市場にも海外の投資マネーが潤沢に流れ込みました。
それだけに不動産の下落幅には注意が必要です。
まとめ・都心のマンションは買い急ぎ禁物
投資マネーの逃避によってマンションが急落する事態になれば、自宅用マンションを購入する人たちにとってはうれしいことです。
超低金利なのに物件が高すぎて購入を見送っていた人たちも少なくありませんでした。
しかし、株価と違って不動産価格の下落はなだらかです。なかなか急落はしません。
過去の不動産市況も時間をかけて徐々に値下がりし、気がついたら、不動産業界の大幅な値引き合戦や経営破綻が始まっていました。
ですから、不動産価格が下がったというニュースを見て、すぐにモデルルームに駆けつけるのは不動産業者が喜ぶだけです。
まだ経営体力に余裕があるうちは値引き交渉にも強気です。不動産会社の経営危機などが報じられて、「いよいよ不動産業界がやばいぞ」という段階になっても、まだ購入を待っても遅くはありません。
「売りは迅速、買いは悠然」
これは、株式相場の格言で、売るときは躊躇せず思い切りが大事ですが、相場が底入れし上昇に転じるのは時間がかかるので、じっくり熟考してから買っても遅くはないという意味です。
マンションでも同じことが言えると思います。