私が欲しかったリゾート物件を買わなかった理由
心から欲しかったリゾート物件
いまの若い人たちは知らないかもしれませんが、1987年に「私をスキーに連れてって」という映画が大ヒットしました。
この主題歌や挿入歌となったのが、ユーミンこと、松任谷由実が歌った「サーフ天国、スキー天国」や「恋人がサンタクロース」という楽曲でした。
この楽曲イメージがのちにスキーブームを生み、1990年前後のバブルとともにゲレンデの周辺にはリゾートマンションが次々と建設されました。空前のリゾートブームの到来です。
当時、私も仕事に慣れ始め、妻とスキー場に機会も増えたため、リゾートマンションや別荘は気になる存在でした。
価格は都内のマンションや戸建て住宅と遜色ないほど高騰しましたが、バブルのころは誰も老後不安なんてありませんでしたし、世の中全体が行け行けドンドンの状態でした。
誰もがさらに値上がりするとも思っていたので、不動産を買った者勝ちのような風潮でした。
次第に、私もリゾート物件が気になり、リクルートの発行する「欲しいリゾート」で物件情報を見ては「脳内リゾート」するのが楽しみになっていました。
買おうと思えば買えたリゾート物件をなぜ買わなかったのか?
雑誌「欲しいリゾート」には購入者のインタビュー記事も掲載され、ウィークデーは都心で働き、週末は別荘やリゾートマンションで過ごす生活の素晴らしさ語る内容ばかりでした。
当然、いつしか、私もリゾート物件が欲しい病に侵されていました。
軽井沢はちょっと素敵な別荘で7000万〜1億円、苗場や湯沢、熱海などのマンションは6〜7000万円、広い部屋だと1億円を超えていた記憶があります。
都内の不動産も高騰していましたが、リゾート物件のバブルぶりは尋常ではない状態でした。
月に数度しか利用しないリゾート物件を所有するのはステイタスのような文化もありました。
私は空気の澄んだリゾート地で週末生活を送りたいという、今にして思えば、ストレス解消のツールが欲しくなっていました。まさに「欲しいリゾート病」です。
リゾート物件を買わなかった理由
しかし、リゾート物件は最終的に買いませんでした。買おうと思えば、買えましたが、見送りました。
なぜか?
妻が強く反対したからです。
「別荘に行ったら誰が掃除するのよ。絶対に私の仕事になるに決まっているでしょ」
この言葉を何度も繰り返されているうちに、「物件を購入しても喧嘩になりそうだな」と断念しました。
ストレス解消のために別荘を購入しても、夫婦喧嘩になっているのでは、新たなストレスが生まれてしまい、本末転倒です。
あれから30年近い年月が過ぎ、早期リタイアしたいまでは、反対してくれた妻に感謝しています。
保有していれば、今頃、持て余して、売るにも売れない状況になっていたと思うからです。
妻も最近は「ねえ、そうでしょ〜。私の言う通りにして良かったでしょ〜」と胸を張っています(笑)
目を覆うばかりのリゾート物件の惨状ぶり
リゾート物件を有料で引き取る業者も出現
いまや、リゾート物件は暴落し、購入する人も少ないため、一度買ってしまうと、売るに売れない「負動産」と化しています。
たとえ利用しなくても、保有しているだけで管理費や固定資産税に年間30〜50万円のおカネが当然のように飛んでいきます。
夫婦で200万円ほどの年金収入だと、生活の圧迫要因になるのは必至です。
リゾートマンションを購入する人がすっかりいなくなったため、驚くような事態も進行しています。
2016年に、新潟県湯沢町のワンルームマンションを売るのではなく、115万円の費用を払って所有権を譲渡したという人の話が全国紙に掲載され、大きな話題になりました。
つまり、おカネを支払ってリゾートマンションを引き取ってもらったという話です。まるで産廃処理にお金を支払うような感覚です。
「私をスキーに連れってって」が上映されてから40年余り。リゾート物件はお金を支払ってでも処分したい「負動産」になってしまったのです。
リゾート物件は相続する人のことも考えて購入することが大切
一方で、私の周辺を見ていると、リゾート物件は高額なものほど取引されているようにも感じます。
つまり、会社の接待施設や超富裕層の道楽としては、いまでも一定の需要があるということです。
そういう物件は、2〜3億円のデザイナーズ物件が多く、ひと山当てた人でなければ、手を出せないような物件です。維持費は相当なものになりそうですが、それだけ高額な物件でなければ、いまやステイタス性がないということなのかもしれません。
しかし、金融資産が5億円程度の人では、そうした物件には手を出せません。法人所有にするか、10億円規模の金融資産を持つ超富裕層の守備範囲になります。
一方で、数千万円の物件であっても年収1000〜3000万円程度の人が手を出すと、あとあと後悔することになりそうです。リゾート物件よりも都心に近い不動産を保有した方が安全と考えるのが常識的です。
とくに、リゾート物件は管理費や固定資産税だけでなく、日常住んでいない物件なので痛みやすく、修繕費も多額になります。
ただ、湯沢や苗場は10万〜30万円で買える激安リゾートマンションが多いので、老後の棲家として購入する人もいます。
こうした激安物件は、夫婦だけという人ならアリかもしれません。
しかし、子供がいる夫婦の場合は、いずれ子供が相続した後、毎月の管理費や固定資産税を支払う義務が生じることも想定する必要があります。
若い人はクルマも別荘にも関心がない
「若い人たちがクルマを買わなくなった」と言われて久しくなりました。
とくに、東京都内など大都市圏は地下鉄など公共交通機関が充実しているので、クルマを保有する必要性が薄れてきました。
何よりも、クルマよりも楽しいことが増えました。
パソコンやスマホ、動画やゲームやトレード・・・・
家族や恋人とクルマを運転して別荘に通うレジャーのスタイルが、いまの若い人たちには決して魅力的に受け止められていないのかもしれません。
ですから、親の世代が激安だからと言ってリゾートマンションや別荘を購入しても、相続する子供世代にとっては迷惑な「負動産」にしか映らない可能性があります。
リゾートマンションなどは買値が激安でも、その後に隠れたコストが、毎月発生することも念頭に入れて子供とも相談のうえで購入することをおすすめします。
最後に、私の場合は、いくら激安でもリゾート物件は買いません。
毎年数10万円の負担が発生するのなら、そのおカネを海外旅行に回した方が、いろいろな観光地も観ることができて楽しいと考えているからです。