2019年は「大・早期退職時代」スタートの年だった
サラリーマン流行語大賞は「大・早期退職時代」が上位独占
先日、年末恒例の「2019 ユーキャン新語・流行語大賞」に対抗して、「2019年サラリーマン流行語大賞」を発表しました。
そのベスト5は、以下の通りですが、この一年を振り返ってみると、会社員の労働環境や待遇、身分が大きく変化する分岐点だったような気がします。
- リストラ・早期退職
- 45歳以上
- 若手優遇
- 年金2000万円不足
- 副業
とくに、45歳以上の中高年サラリーマンは会社から不要とされる時代が本格化しました。
「社員は家族」という建前だった日本の一流企業も、いよいよ、そんなことを言っている余裕がなくなり、本音の労務・人事政策を打ち出し始めた年でした。
逆に言えば、会社側が休日を増やし副業も容認するということは社員に意識改革を迫っているともいえます。
企業が社員を雇用するコストは社員が思う以上に重い
それでも、なお会社にしがみつき、給料だけで生きていこうとするサラリーマンは少なくありません。
「会社に貢献してきた自分がリストラ対象になるわけがない」「うちの会社は業績も順調だし、欧米企業のような人員削減を考えているはずがない」・・・
こんな気持ちがあるのかもしれません。
しかし、2019年は中高年が不要とされる早期退職時代のスタートにすぎません。
政府が70歳雇用を推奨すればするほど、敏感な企業は社員が中年のうちにリストラしておこうという空気が強まるものと思われます。
実際、東京商工リサーチが12月6日に発表した上場企業の「早期・希望退職者」実施状況は、衝撃的な結果となりました。
2019年1月から11月に早期・希望退職者を募集した上場企業は、のべ36社、対象人数は1万1351人に達し、社数と人数ともに2014年以降の年間実績を上回って最多を更新しました。
とくに、2018年の1年間と比較すると、社数、人数とも約3倍増となり、まさに「大・早期退職時代」を象徴する1年だったわけです。(参考:東京商工リサーチ)
早期退職に怯えるより自ら早期退職に備える時代
「大・早期退職時代」が一層拡大する理由とは?
なぜ、日本企業は急激に中高年のリストラを活発化しているのでしょうか?
まず第一に、パソコン作業に人間が不要になってきたからです。
これまでパソコン作業は人間しかできないと思われてきました。
しかし、AI(人工知能)やRPA(Robotic Process Automation)の導入で、間接部門業務が省力化されてしまいました。
RPA(Robotic Process Automation)は、これまで人間のみが対応可能と想定されていた作業、もしくはより高度な作業を人間に代わって実施できるルールエンジンやAI、機械学習等を含む認知技術を活用した業務を代行・代替する取り組みです。人間の補完として業務を遂行できることから、仮想知的労働者(Digital Labor)として、2025年までに全世界で1億人以上の知的労働者、もしくは1/3の仕事がRPAに置き換わると言われています。(出典:日本RPA協会)
社員がパソコン上で行っている作業はRPAの普及によって自動化され、とくに金融機関ではRPAが急速に導入されました。
メガバンクが数千人や1万人の大規模リストラに着手したのは、こうしたRPAの影響が背景にあるといわれています。
コスト面と正確さでは、人間はRPAやAIにかないません。
こうしたRPAやAIの進化のほかにも、70歳まで雇いたくないという企業心理や、高止まりするベテラン社員の給料を優秀な若手に再配分したいことなど複数の要因があります。
ただ、間違いないのは中高年を不要と考える早期退職時代はもう後戻りすることはないということです。
社員が考えている以上に企業は危機感を持っている
私も会社オーナーとして社員の給料のあり方を考えることが多いのですが、正直言って、人件費がとても重荷に感じています。
なぜなら、人件費の重みを増しているのは、会社と社員が折半で負担する厚生年金や健康保険など社会保険料です。
会社は社員に対し本人の保険料分を含めた給料を支払う一方、国に対しては会社負担分の社会保険料も毎月支払っているわけです。
会社負担分の社会保険料は社員に見えない負担ですが、年々、保険料率が引き上げられ、負担感が増したため、最近は新入社員の採用には人件費面から慎重にならざるをえなくなっています。
とくに、私の会社は新卒で採用したあと、終身雇用を社の方針としています。
ですから、業績が悪化してもリストラは考えていません。
それでも歯を食いしばって来年も新卒採用を実施する予定です。
雇用こそ、企業の社会貢献だと考えているためです。
会社の規模は違っていても、経営者の考えることは五十歩百歩、変わらないものです。
最近の日本企業の低迷ぶりを見ていると、東証一部上場企業であっても将来的な人件費の負担増に不安や危機感を覚えているはずです。
もちろん、すべての中年サラリーマンがリストラされるわけではありません。
ですから、過度に未来のリストラに怯える必要はないと思います。
ただ、少なくとも、万が一、リストラに直面することがあっても余裕を持って受け止められる自力をつけておくことが重要です。
では、余裕を持ってリストラを受け止められる自力とはなんでしょうか?
それは間違いなく自力で稼ぐ力と資産形成だと考えています。
次回は自力で稼ぐ力や資産形成を強化する方法について詳しく解説したいと思います。