”大廃業時代”が到来!企業を買収する会社員が増える予感
中小企業は大廃業時代に入った!黒字企業でも廃業の危機
「大廃業時代」。
中小企業は日本企業の99%を占める、いわば日本経済の屋台骨です。しかし、いま、その中小企業が後継者不足から廃業するケースが急増しています。
東京商工リサーチの調査によると、2018年に休廃業・解散した企業は前年比14.2%増の4万6724件。15%近い大幅な増加となりました。
休廃業・解散した会社の代表者(社長)は60代以上が8割を超えており、後継者不足が廃業の原因となっています。(参考:東京商工リサーチ)
中小企業の廃業は日本社会に大きな問題をもたらす危険性があります。なぜなら、黒字経営の中小企業でも後継者が見つからず廃業に追い込まれているからです。
経済産業省は、放置すれば、2025年までに約22兆円の国内総生産(GDP)が失われると懸念しています。
日本企業の99%を占める中小企業の多くが廃業危機にある。中小企業経営者の平均引退年齢は70歳だが、これを超える245万人の約半数は後継者が未定だ。経済産業省はこのままでは黒字企業の廃業が相次ぎ、2025年までに約22兆円の国内総生産(GDP)が失われると懸念する。(出典:日本経済新聞)
少子高齢化による社会保障への悪影響ばかりに目が向きがちですが、大廃業時代の到来は多くの雇用と日本の富を消滅させる危機をはらんでいるのです。
NHKが報じた企業オーナーと会社員を結ぶM&Aマッチングサイト
後継者不足による中小企業の廃業問題は、私にとって他人事ではありません。
私の所有する会社は現在、妻が社長を務めていますが、子供達は現在、跡を継ぐ様子はないからです。
社員の中から将来の経営者が育ってくれることを願っていますが、なんせ社員の平均年齢は30歳。社内をまとめ、取引先から安定的に仕事を取れるような経営者が誕生するかどうか、未知数な状態です。
ですから、妻には健康で1日でも長く社長を続けてもらうしかありません。
ただ、それでも後継者が育たなければ、社外の人材に事業を継承することも頭の片隅に置いています。なぜなら、社員の雇用を守りたいからです。
おそらく私と同じような気持ちの経営者は全国にたくさん存在するのではないでしょうか?
そんなことを考えている矢先、10月6日放送のNHKスペシャル「大廃業時代〜会社を看取(みと)るおくりびと〜」が興味深い話を紹介していました。
この番組は、“おくりびと”(経営コンサルタント)が廃業リスクの高い中小企業を無理に延命するのではなく、むしろ、取引先や従業員、地域経済にダメージを与えないように廃業に導く過程を描き出した密着ルポです。
いわば、”企業の安楽死”が重要であることが分かるルポですが、番組後半、問題解決のヒントとなる場面が登場しました。
それは、会社を売りたいオーナーと、会社を買いたい個人や会社員を結びつけるM&Aマッチングサイトの活用です。
番組の中で、富山県にある餅菓子の製造会社が登場します。
76歳の社長と従業員3人、国内産のもち米や小豆にこだわった創業60年の会社です。製造・販売されている和菓子は地元のお祭りなど行事の際には欠かせない人気の商品です。
しかし、社長は体力の衰えを痛感し、後継者もなく、会社を廃業すべきかどうか悩んでいました。
その時、地元信用金庫のアドバイスで事態は思わぬ展開となります。
サラリーマンが中小企業を買収して経営者になる
M&Aマッチングサイトで会社員が企業買収
餅菓子製造会社の社長に地元信用金庫が持ち込んだのは、会社の売り手と買い手をネット上でマッチングするM&Aプラットフォーム 「TRANBI(トランビ)」でした。
社長が登録すると、すぐに13件の問い合わせが入りました。
この中から社長が選んだのは関東在住のサラリーマン。「赤飯や和食は日本の宝物。健康志向の人たちにニーズが増えるはず」とコメントしていたのが目に止まったといいます。
そのサラリーマンは富山まで足を運び、社長と面会。商品を味見したあと、買収後も社長には製造のアドバイザーとして会社に残って欲しいと要請しました。
面会後、取材に対し、社長は「M&Aは大きな会社がやることかと思っていた」と明るい表情で語りました。
少子高齢化による後継者難で、日本の技術や伝統が消えようとしています。
しかし、サラリーマンが少額資金で買収し、社長となって、日本の技術や伝統をになってきた中小・零細企業を救う道があるのです。
NHKが取り上げたM&Aサイトを開設したのも中小企業の経営者だった
富山県の小さな会社社長と関東のサラリーマンを引き合わせたM&Aマッチングサイト「TRANBI(トランビ)」。実は、このサイトを立ち上げた高橋聡さん自身、長野市でゴム素材の加工製造会社を経営する中小企業社長でした。
高橋さんは、このサイトを創業した想いについて、次のように述べています。
2005年に家業を継ぐために長野に戻って以来、毎年のように後継者不在を理由に廃業をしていく仕入先・取引先を目の当たりにしてきました。これらの会社の多くは黒字であり、中には日本中でその会社しか作っていないオンリーワンの製品を持つ優良企業も少なくありません。
しかしながら、これらの会社の多くは売上が数億円未満の中小企業であり、この規模の会社のM&Aによる事業承継を引き受けてくれるM&A専門家はいませんでした。小規模な会社のM&Aは、かかるコストに対して得られる報酬が少なすぎるためです。(出典:TRANBI(トランビ)公式サイトより)
高橋さんは、後継者不足で黒字でも廃業する企業を次々と目の当たりにし、中には国内オンリーワンの製品を作る優良企業まで消えていくことに危機感を覚え、父親から継いだ会社の一事業として2011年に「トランビ」をスタートしました。
ただ、このサービスは会社経営者だけでなく、サラリーマンにとっても大切なサービスだと思います。
サラリーマンは人生下り坂の生き方が難しい
サラリーマンの中には、入社当時、社長を夢見た人も少なくないはずです。
しかし、現実には出世に無縁なサラリーマンが大半です。
サラリーマンは中年期を過ぎると下り坂を迎えますが、人生は上り坂よりも下り坂の方が難しいものです。
しかし、長年ビジネスマンとして培った経験や知識、人脈があります。後継者不在で廃業危機に直面している中小企業にとっては、その経験や知識、人脈が役立つかもしれません。
売り出された企業との相性が良ければ、WIN-WINの関係になるはずです。
サラリーマン副業で起業を考えている人もいると思いますが、起業はゼロからのスタートです。
しかし、企業買収は人材や設備が揃っっています。
副業の一つとして中小企業のM&A(企業買収)を経験しておけば、退職後の経済的自立に役立つかもしれません。
それ以上に、大廃業時代のいま、中小企業の雇用や技術を守ることは社会貢献になります。
次回は、M&A(企業買収)マッチングサービスについて、料金や利用方法、どんな会社が売りに出されているのか、詳しく解説したいと思います。
