”ポンジ・スキーム”詐欺はなぜ100年以上も続いているのか?
”元本保証”で月3%の高配当に1万3000人が騙された
「またか」という手口の詐欺師が逮捕されました。
「詐欺に注意」話はもう書きたくないのですが、あまりにも多くの人たちが、いとも簡単に騙される事件が報じられたので、驚きを込めて書きたいと思います。
新聞各紙によると、月3%の利率で配当金を支払うなどと架空の投資話で金をだまし取った疑いで、千葉市の投資関連会社「テキシアジャパンホールディングス」の実質経営者・銅子正人容疑者(41)ら10人が逮捕されました。
朝日新聞によると、銅子容疑者は自らを「KING(キング)」と名乗り、ウェブサイトで「シンガポールを拠点に、世界的にビジネスを展開する実業家」と紹介。被害者は「素晴らしい生き方をしているお金持ちなので、信頼ができる」と錯覚していたということです。
そして、肝心の投資話ですが、出資金は”元本保証”で月3%の配当利回り。つまり、100万円出資すると、元本が保証される上に毎月3万円の配当がもらえる投資話です。単純計算で年率36%の利回りですから、この段階で、誰が見ても詐欺確定です。
にもかかわらず、全国で高齢女性ら1万3000人が出資し、総額は460億円に上るというのですから、詐欺師が後を絶たないのも分かるような気がします。
なお、逮捕者の中には暴力団関係者もいて資金は暴力団にも流れた可能性がるという報道もあります。そうだとすると、被害者は暴力団の資金源になったということです。
「騙される方もどうかしているよ」
こんな声が聞こえてきそうです。
おそらく、チコちゃんに知られたら、ものすごく怒られます。
「ボーっと生きてんじゃねーよ!」
資金を集めて運用しない「ポンジ・スキーム」は100年続く詐欺手口
今回のような詐欺は「ポンジ・スキーム」と呼ばれます。
元本保証や高配当をうたって出資を募り、集めた資金を運用しないで、資金の一部を配当に回すという典型的な詐欺の手口です。
ポンジ・スキーム(英:Ponzi scheme)とは、詐欺の一種で、「出資してもらった資金を運用し、その利益を出資者に(配当金などとして)還元する」などと謳っておきながら、謳っていることとは異なって実際には資金運用を行わず、後から参加させる別の出資者から新たに集めたお金を(やはり運用せず)以前からの出資者に“配当金”などと偽って渡すことで、あたかも資金運用が行われ利益が生まれてそれが配当されているかのように装うもののこと。(出典:Wikipedia)
「ポンジ・スキーム」という名称は、1910年代から20年代に米国で活動した詐欺師チャールズ・ポンジの名前が由来で、こうした詐欺は100年以上続いていることになります。
不特定多数からお金を集めて運用せずにタコが自分の足を食べるように配当を出す手口なので、いずれ、配当は出せなくなり、出資者が「解約しても元本が戻ってこない」と騒ぎ始めた頃には、必ず破綻します。
サルでも分かる怪しい詐欺話の見分け方
詐欺被害を拡大する出資者の紹介制度
「ポンジ・スキーム」の詐欺グループは、資金運用せずに、集めた資金を配当に回すだけですから、新たな出資者が参加しないと、すぐに倒れてしまいます。
そこで、詐欺グループのほぼ100%が利用する方法は、出資者の紹介制度です。
今回のテキシア詐欺事件も、出資者が新たな出資者を勧誘すると、ランクが上がって配当が増える仕組みだったと報じられています。
愛知県警によると、出資者は下から一般会員(約1万1360人)▽エバンジェリスト(約1210人)▽マネジャー(約220人)▽ディレクター(約130人)の四つに分けられていた。一般会員が昇格するには、500万円以上の出資か、3人以上の新規勧誘が条件という。ランクが上がると、受け取る配当も増える仕組みだった。(出典:朝日新聞)
出資者の紹介システムは、過去の投資詐欺事件でも使われていた常套手段です。
ニューマネーが入ることで、詐欺グループは配当の支払いを続けることができますが、いずれ紹介者がいなくなり、ポンジ・スキームは破綻します。これはネズミ講も同じ構図です。
なぜ警察の対応が後手に回るのか?
新たな出資者を紹介すると、自分のランクが上がって配当も増えるので、みんなが頑張って新たな出資者を誘います。
当然、被害者はネズミ算式に拡大し、破綻した時には巨額な被害額になっているのも、ポンジ・スキームの特徴です。
しかし、多くの国民は「元本保証で月利3%なんて、誰でも詐欺と分かるはずなのに、警察はなぜもっと早く検挙できなかったのか?」と疑問を抱くはずです。
詐欺グループが本当に資金を運用しているのか否か見極めが難しく、破綻し、被害者が増えないと手を出せないのではないかという人もいます。
しかし、元本と利回りを保証してお金を集めるのは出資法違反です。
法律を知っている人ならば、出資条件を調べるだけで違法だと分かりそうなものです。ここまで被害が拡大する前に警察が逮捕できなかった不思議です。
チコちゃんに知られたら、警察はものすごく怒られると思います。
「ボーっと生きてんじゃねーよ!」
この種の詐欺は巨額の資金を集めることができるだけに、今後、暴力団の有望な資金源になる可能性があります。実際、今回のテキシア詐欺事件も暴力団に資金が流れた可能性が報じられています。
警察庁はあらゆる手段で暴力団の資金源の根絶作戦を展開し成果をあげています。しかし、今回、被害額が460億円に膨れ上がるまで検挙できなかったのは残念です。
詐欺被害にあわないための簡単メモ
最後に、サルでも分かる詐欺の見分け方をまとめます。
まず、「元本保証」とうたっているのはすべて詐欺です。
元本を保証しているのは銀行預金しかありません。お金を運用する以上、損失の可能性がない運用はありえません。
月利3%や年利10%といった「法外な高利回り」をうたっているのもすべて詐欺です。
公的年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)でさえ、2018年10~12月期の収益額は14兆円規模の損失でした。資金運用は水モノ。利回りを約束できるものではありません。
たくさんのCMや広告、芸能人の歌謡ショーなどで出資者を集める投資案件も詐欺の可能性が濃厚です。そんなことにコストをかけるくらいなら、資金を投資に回して運用成績を上げるはずです。
詐欺的な投資話に共通している3ポイントは以下の通りです。
- 「元本保証」
- 「高利回り」
- 派手なCMや広告展開、芸能人などの歌謡ショー
上記のうち、ひとつでも当てはまったら、お金を出してはいけません。
騙される人は詐欺師に欲望を見透かされています。
ですから、出資者は利回りなど条件面に耳を傾けがちですが、むしろ運用方法の方が重要です。説明を聞いても理解できなかったら、絶対に出資してはいけません。
資産総額9兆円・世界ナンバー1の投資家バフェットですら、自分が理解できないビジネススキームの会社には投資しないと話しています。
「理解できないものには投資しない」
これがお金持ちの鉄則なのです。
最後に、政府がWeb上で投資詐欺に注意を呼びかけています。ぜひ一読してください。(政府広報オンライン)