早期退職は”危機”ではなく”好機”という感覚が重要
今年上期の早期退職はすでに前年を上回った!
今年になって大企業を中心にリストラがさらに急増しています。
日本経済新聞は、今年1月から6月まで上場企業の早期退職が約8200人で、すでに昨年の年間分を上回って倍増したことを報じました。
人手不足が続くにもかかわらず、大企業で定年前の退職を募る早期退職が増えている。2019年1~6月には上場企業の17社が合計で約8200人の早期退職者数を発表し、半期で18年を上回った。製薬など、業績が好調なうちに人員を適正化して事業環境の変化に備える動きも目立つ。応募者側も人生100年時代をにらみ、早期にキャリアの再設計に動く中高年も増えている。(出典:日本経済新聞)
今回のリストラの特徴は、45歳以上の中高年が標的にされているという点です。
では、今年の早期退職の急増ぶりは、過去に比べて、どんな水準なのでしょうか?
日本経済新聞は、このペースが続けば、今年の早期退職は2013年以来、6年ぶりに年間1万人超えとなりそうだとも報じました。
昨年から中高年に吹き荒れるリストラの嵐は、沈静化するどころか、逆に強まっているわけです。
中高年にとって早期退職は本当に危機なのか?
最近、45歳以上の中高年を標的にしたリストラが増えているのは間違いありませんが、果たして、これは中高年社員にとってピンチなのでしょうか?
大学を卒業して新卒で就職した会社が自分にとって理想的な会社だったのか、疑問を抱えつつ、家族や住宅ローンのために、日々働いているサラリーマンは少なくないと思います。
ですから、長い目で見たら、早期退職の募集を奇貨として、人生を組み直すのは正解ということも十分にありえます。
しかも、早期退職を募集する場合、多くの企業が退職金を割り増しする制度を採用しています。
多額の退職金を手にすることによって、住宅ローンを前倒し返済したり、当面の生活費の補填財源にすることができます。
さらには、早期退職の募集に応じた場合、その退職は自己都合ではなく、会社都合の退職になります。
会社都合の退職は失業保険があらゆる面で優遇されているのです。
有利な早期退職制度の活用で人生を幸福に導く方法
転職で理想的なサラリーマン生活を目指すケース
会社都合で退職するメリットは、①退職金の割り増し制度が活用できる②自己都合退職に比べて失業給付金(失業手当)の支給が圧倒的に優遇されることが挙げられます。
退職金の割り増し制度は、企業によって内容が異なるので、まずは自分の会社の人事・厚生部に聞いてもらうしかありません。
もう一つの失業手当は、国の制度なので、どんなサラリーマンでも条件は同じです。
会社都合による早期退職の場合、失業給付金を早く受け取ることができます。
具体的には、「待機期間7日間+約1カ月後」に最初の手当が支給されます。自己都合の「待機期間7日+3カ月」に比べて、圧倒的に早い支給となっています。
しかも、支給される期間ですが、会社都合は長期間にわたって受け取ることが可能です。
給付日数は雇用保険の被保険者期間や退職時の年齢によって違いがありますが、自己都合退職の「90~150日」に対し、会社都合退職は「90~330日」と、最大1年近く受給することができるように設定されています。
退職の形 | 最初の失業手当 | 失業手当の受け取り期間 |
自己都合による早期退職 | 待機期間7日+3カ月 | 90~150日 |
会社都合による早期退職 | 待機期間7日間+1カ月 | 90~330日 |
上記は、失業手当を受け取る際、自己都合と会社都合の違いを表にしたものですが、明らかに会社が募集した早期退職に応じた形(会社都合)で辞めた方が有利なのは一目瞭然です。
転職先探しはハローワークよりも
しかし、失業手当を受給するためには、きちんと転職先を探していることが大前提となります。
まずは、多くの人はハローワークで求人を探すはずです。
ハローワークの最大のメリットは、各都道府県に設置されていて、圧倒的に求人数が多いという点です。その数は100万件以上に及びます。
まさに、日本最大の職業紹介所です。
カウンセリングや職業訓練が受けられ、地方の求人も多く、採用の合否を通知してもらえます。
しかし、企業がハローワークに求人を出す際の費用はゼロ円です。ですから、中小・零細企業が多く、都心の大手企業を探すのは厳しいかもしれません。
都心部の大手企業に転職先を探す場合は、民間のエージェントを利用するのが近道だと思います。
エージェントは転職を成功させた場合、企業から100万円といった多額の成功報酬をもらう契約をしているため、それだけの金額を払える企業ということでもあります。
たとえば、大手のリクルートエージェントは一般公開している求人のほかに10万件以上の非公開求人を取り揃えています。
求人紹介をするだけではなく、職務経歴書や履歴書の添削や、独自に分析した業界・企業情報を提供したり、志望企業に推薦するなど様々なサポートを用意しています。
また、30〜54歳の中高年で東京中心に就職先を探している人には、公益財団法人の東京しごと財団を利用する方法もあります。
会社都合の場合、失業手当が支給される期間は長いですから、いくつかエージェントを利用して、自分に合った転職先をじっくり探して、人生の組み替えを成功させるのが賢明です。